研究課題/領域番号 |
19K03480
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
本間 泰史 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50329108)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | スピン幾何学 / クリフォード解析 / higher spin / ラリタ-シュインガー作用素 |
研究実績の概要 |
(1)昨年度に引き続き、高次スピン-ディラック作用素(以下、HSD作用素)の調和解析の研究を中心に研究を実施した。ラプラス作用素の(n+1)乗の因子に、スピン(n+1/2)のHSD作用素が現れることがクリフォード解析学で知られていたが、その係数などを明確にし、定曲率空間にまで拡張した。「因数分解公式」と名付け、その応用として球面上のHSDの固有値をすべて計算した。2021年度の第一の研究実績は、これらの研究成果が国際学術誌に掲載されたことである(富久琢磨氏との共同研究)。そして、高次スピノール場が、どのように低い次数のスピノール場と関係しているかを、定曲率空間の場合に明らかにした。「高次スピンのスピン幾何学」の足掛かりとなるものである.また、因数分解公式を球面調和多項式の場合に書き下すことを試みた。この場合の因数分解公式は、HSD作用素とその双対作用素となる代数的作用素が絡みあうもので複雑であり、まだ完成していない。これが完成すれば、高次スピンに対するクリフォード解析学の普遍的理解へと繋がると予想され、2022年度以降も研究課題とする。 (2)本課題の研究成果「グラスマン多様体Gr_o(2,n)上の不変微分作用素がなすHiggs代数」について、幾何学シンポジウムにて基調講演を行った。 (3)本課題の目的の一つ「特別なアインシュタイン多様体上のラリタ-シュインガー場」について,所属研究室学生ら(富久琢磨氏,大野走馬氏)が研究を実施した。具体的には、Nearly Kahler多様体上のラリタ-シュインガー場の空間を明らかにし、キリングスピノール場の変形理論を与えた。変形理論との関連性が与えられたことで、この方向の研究の重要さが再認識できた。Nearly parallel G2多様体、佐々木-アインシュタイン多様体上のラリタ-シュインガー場の研究が今後の課題である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナのよる影響で国内外へ出張ができなかったため、共同研究者や関連した研究者との対面での交流ができず、研究課題の新しい方向性の議論ができなった。2020年度に国際研究集会の開催を計画し、コロナの影響で2021年度に延期していた。しかし、コロナは収束せず、海外研究者の招聘が不可能となったため、国際研究集会を実施を断念した。 学内で役職に就いたことにより学内業務の負担が増えたこと、オンライン講義の準備負担も大きいため、十分な研究時間を得られなかったことも研究が遅れた大きな理由である。特に、本研究課題の目的のうち「四元数ケーラー多様体と指数定理」「グラスマン多様体上の調和解析」については、進展が得られなかった。 このような状況であったが、高次スピンディラック作用素の研究成果が国際誌に掲載されたので、少しは進展したといえる。また、本課題の目的の一つであった「Nearly Kahler多様体のラリタ-シュインガー場」を解明した所属研究室学生らに感謝したい。
|
今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べたように、高次スピノール値の球面調和多項式上でHSD作用素とその双対作用素の因数分解公式を具体的に与えたい。2022年度前半に、その公式を明らかにし、後半は研究成果を論文としてまとめ、学会または研究集会で発表する。また、海外の研究者らと協力して、この因数分解公式のクリフォード解析学への応用を考察する。コロナの状況に依るが、可能な限り海外出張または研究者の招聘を行いたい。 また、本研究課題の目的を。以下の順番で実施してく(1)Gr_o(k,n)の不変微分作用素らがなす代数の解明を試みる。(2)研究室学生らとの共同で、佐々木-アインシュタイン多様体、Nearly平行G2多様体上のラリタ-シュインガー場についての研究を行う。(3)スピンc構造を持つ多様体上のラリタ-シュインガー場の研究を行う。(4)HSD作用素の定曲率空間上での研究成果を、対称空間やアインシュタイン-スピン多様体上へ拡張を行う。これらの研究の実施についても、国内外の研究者の協力が不可欠であるので、必要に応じて研究出張や研究者招聘を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の主な経費は海外旅費を用いて国際共同研究をすることであったが、コロナの影響で2020年度・2021年度とも海外渡航ができなかった。また、国際研究集会を実施するために、海外招聘旅費を使用予定であったが、コロナな影響により実施には至らなかった。 2022年度では、コロナの状況にもよるが、国際共同研究を再開し、海外出張および海外研究の招聘を行いたい。
|