研究実績の概要 |
コクセター系(W,S)の生成系Sによる、群Wの母関数(増大度関数)の収束半径の逆数は増大度と呼ばれ、Sの元が鏡映として空間に離散的に作用する際、Wの基本領域である多面体が空間をタイル張りする拡がり方を表す量である。一方(W,S)から |S|-次元実アファイン空間に W-不変な2次形式Bが定義され、(W,S)の幾何学的実現と呼ばれるWから直交群O(V, B)への単射準同型が定まる。この時コクセター元と呼ばれるWの元のスペクトル半径が、(W,S)の幾何学的実現から一意に決まる。 今年度は2次元双曲コクセター群の指数2の部分群であるフックス群のディリクレ基本領域の形状について研究を行った。具体的には双曲コクセター四角形の4つの辺の鏡映が生成する双曲コクセター群の指数2の部分群であるフックス群(以下、四角群という)のディリクレ基本領域が基点の取り方で何角形になるかを調べた。既存の結果から辺の数は6、8、10の可能性があるが、任意の四角群に対し、双曲コクセター四角形の4つの辺の上に基点を取るとディリクレ基本領域は6角形になり、非調和比から定まる曲線上に基点を取ると8角形になり、その他の場合に10角形になることを数値実験で確認した。先行結果である三角群の場合は、双曲コクセター三角形の3つの辺の上に基点を取るとディリクレ基本領域は4角形になり、内部に基点を取ると6角形になったので、特殊な曲線上に基点を取ると8角形が現れたのは四角群の場合の新しい現象である。
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