研究課題/領域番号 |
19K03486
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
福井 敏純 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90218892)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 特異点 / 非固有点軌跡 |
研究実績の概要 |
多項式写像の非固有点軌跡のニュートン図形を用いた記述法を研究した.実または複素係数のm変数多項式をn個並べると、m次元実または複素ユークリッド空間からn次元実または複素ユークリッド空間への写像を定義することができる。多項式写像である.この写像はコンパクト化できm次元コンパクト代数多様体からn次元コンパクト代数多様体への代数的写像を得るが、原像の無限遠に対応する部分集合のこの写像による像の有限部分が、非固有点軌跡となる。m=nで複素係数の場合はこの非固有点軌跡は超曲面であることがZbigniec Jelonek によって示されている。Zbigniec Jelonek はその次数の上からの評価等も与えている。研究代表者は,土屋健希氏と協同で、多項式写像の非固有点軌跡を記述する問題に取り組んだ。ある非退化性の条件の元で、非固有点軌跡を記述する公式を与えることに成功した。以下それを記述したい。一般性を失うことなく各多項式の定数項は0でないと仮定できるのでそれを仮定する。各多項式のニュートン図形の組に対し、整数ベクトルを決めれば、その整数ベクトルの支持する面の組の概念を定義できる。その面が原点を含まないときそれらの面に対応する多項式を制限して得られる多項式の零点集合が非特異点軌跡を稠密に含めば、残りの原点を含む面に対応する多項式を制限して得られる写像で前の零点集合を送ったものが、非特異軌跡のいくつかの成分の和集合になる。逆に非固有点軌跡の成分はこのようにして得られる。この結果を証明した論文はArnold Mathematical Journal に投稿し4月に受理されたばかりである。 他にミンコフスキー空間内の尖辺に関する研究や、偏微分方程式の解の分岐の研究も行っているが詳細は省略する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症の感染対策で、2020年度は出張が大幅に制限された。2021年度も後半になって国内出張は可能な状況になってきたが、出張計画を大幅に変えざるを得なかった。無理やり研究を終わらせることとせず、1年研究を延長することとした。当初計画より遅れたが遅れたなりに順調に進んでいると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
今後しばらくは、3次元ミンコフスキー空間の尖り辺(cuspidal edge)の研究に注力することとなろう。3次元ミンコフスキー空間の曲線について、現在は3次元ミンコフスキー空間内の曲線について曲線の基本定理が準備できた状況である。曲線論の基本定理も論文値してまとめたいが、3次元ミンコフスキー空間の尖辺の研究も射程に入っていると考えている。そのために必要な研究連絡を絶やさないように努めていく。 長崎大学情報データ学部の加葉田雄太朗氏とは研究上の興味を共有し現在擬球の研究に取り組んでいる。ヒルベルトの定理より擬球は3次元ユークリッド空間に実現すると必ず特異点を持つ。擬球の3次元多様体への実現を考えるとそれはベックルンド変換と呼ばれる変換を許す。特異点の型としては尖り辺(cuspidal edge)、燕尾(swallowtail)、尖り蝶蝶(cuspidal butterfly)、尖り唇(cuspidal lips)、尖り嘴(cuspidal beaks) などが現れる。これらの特異点型の判定法も得ているが、ベックルンド変換でそらが特異点がどの様に写り合うかについて、簡単な記述はできない事までは確認している。しかしながら特異点が特異点に移るときは思いもかけない関係性が現れるので非常に興味深い。こういった現象の幾何学的背景を探求することはこの問題の課題である。擬球片の解析的延長がどのような曲面を定義するかも非常に興味深い話題である。非特異点軌跡が正則部分多様体であることは保証されず大域的性質をどの様に記述するかは、大きな今後の課題であると思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
感染症対策で出張が大きく制限され、当初計画より出張を減らした。今年度無理に出張計画を立て、本研究を終了とせずに、次年度も継続することとし出張計画をいくつか次年度に振り替えた。次年度の計画もその内容は本年度と大差はない。具体的には研究連絡のための出張の経費、必要な書籍の購入経費、PC等の機器の整備のための経費である。
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