研究課題/領域番号 |
19K03492
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中西 康剛 神戸大学, 理学研究科, 教授 (70183514)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結び目 / 図式的アプローチ / 局所変形 |
研究実績の概要 |
「研究の目的」にあるように、図式的アプローチにより結び目の研究を行った結果、次のような研究実績が得られている。 (1) 仮想結び目の基本的な不変量である writhe polynomial と対応する局所変形を発見し、 shell move と名付けた。仮想結び目のガウス図式における局所変形と見ると理解がしやすい。その上で、この局所変形に対応する2成分絡み目の不変量を究明した。不変量とそれに対応する局所変形の究明は基本的なアプローチの一つである。ここで得られた writhe polynomial と shell move の対応の発見は大きい。さらに、2成分絡み目に拡張することによりこの不変量の幾何学的意味合いの理解が深まった。中村拓司と佐藤進との共同研究による成果である。この成果は佐藤が研究集会で報告し、学術雑誌に掲載された。 (2) 仮想結び目の被覆に関する研究である。任意有限個の仮想結び目の組に対してそれらを被覆とするような仮想結び目を構成することに成功した。仮想結び目のガウス図式によるアプローチで証明をした。被覆自身が仮想結び目の幾何的不変量であるが、この成果により、仮想結び目の被覆に関する新たな知見が得られ、被覆のもつ性質が深く認識できるようになった。中村拓司と佐藤進との共同研究による成果である。この成果は中村が研究集会で報告し、学術雑誌に掲載予定である。 「研究実施計画」に基づき、結び目や低次元多様体の多岐にわたる話題に精通している研究者との交流を進めてきた成果として得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実施計画」に基づき、結び目や低次元多様体の多岐にわたる話題に精通している研究者との交流を行なってきている。本年度は神戸近辺での結び目と局所変形の研究会に替えて、中村拓司と佐藤進との共同開催により「拡大KOOKセミナー 2019」を神戸大学で行った。本研究課題の国内旅費により研究者を一人呼ぶなど活用できたと判断する。また、研究集会「Knots in Tsushima 2019」にも研究者を一人きていただき大いに研究交流した。局所変形である # move に関する成果発表も行った。琉球結び目セミナーで交差交換と Alexander 多項式に関する成果発表をした。また、その他の研究集会でも研究交流に取り組んだ。国際集会での研究発表を計画したが、都合が合わないために断念した。次善の策として、南フロリダ大学の齋藤昌彦教授を訪ね、数人単位の研究会を開催して、研究交流を行った。これらの研究交流により、これまでの研究実績の普及とこれからの研究の方向性の見極めに大いに役立った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策については、「研究実施計画」にあるように、結び目理論や低次元多様体の多岐にわたる話題に精通している研究者との交流が不可欠である。研究計画が当初計画どおりに進まないときでも、関連する研究者の意見や助言を得ることにより、軌道修正することが可能になる。研究者を神戸に呼んだり、学会や研究集会に積極的に参加して、情報収集をはかり、将来の方向性に関する議論を深める機会にする。コロナウィルスによる情勢では海外出張は難しいかもしれないが、可能性があれば、外国における国際集会での研究発表も検討したい。具体的な研究課題は次のとおりである。 (1) 局所変形の開発:本研究課題のコアで、新しい局所変形の発見、局所変形で写りあう結び目に関する結び目の構造を究明する。局所変形の間の関係性、例えば強弱、について研究する。 (2) 不変量の究明:結び目理論の中心的課題の一つであり、多様な結び目の不変量に関する結び目の構造を研究する。また、不変量の発見を試みる。 (3) 仮想結び目への応用:仮想結び目について、局所変形の発見および応用を研究する。 (4) 彩色数への応用:彩色数について、局所変形の発見および応用を研究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費で購入を予定していたコンピュータであるが、研究発表における機動性を考慮して、iPadAir を購入した。多くの研究集会や学会への参加や研究発表を企画していたが、コロナウィルスの流行や諸般の事情により、断念した。これらの対策を考慮して、差額が生じた。
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