現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
閉Riemann多様体M上のMorse関数fに対して、fのMorse指数がkの臨界点を生成元とする自由加群をC_kとし、境界準同型∂:C_k→C_{k-1}を∂p:=Σn(p,q)qと定める。ただしn(p,q)とは臨界点pとqを結ぶfの勾配ベクトル場の積分曲線の本数である。そしてこのとき∂∂=0となることがわかり、そのホモロジー群はMの特異ホモロジー群と同型になる。また閉Riemann多様体上の滑らかな関数f_1, f_2, f_3に対して各f_i-f_jはMorse関数であるとし、適当なMorse指数の条件の下でf_3-f_2の臨界点p、f_2-f_1の臨界点q、f_3-f_1の臨界点rに対して、各辺がf_3-f_2、f_2-f_1、f_3-f_1の勾配ベクトル場の積分曲線でp、q、rを結ぶY字グラフの本数n(p,q;r)を結合係数にして積m_2(p,q):=Σn(p,q;r)rが定義される。これら臨界点を結ぶ勾配ベクトル場の積分曲線の本数やY字グラフの数え上げはMorse関数の臨界点の不安定多様体の交叉の様子を拾い上げているので、Mの代数トポロジー的な情報が抽出できると言う仕組みになっている。境界付き多様体上のMorse関数に対しても同様に臨界点の不安定多様体の交叉を注意深く観察しながらMorse複体やそれ上の積を構成したが、ここで扱っているMorse関数は境界上にも臨界点を持つため、臨界点を結ぶ勾配ベクトル場の積分曲線やY字グラフを用いた臨界点の不安定多様体の交叉の記述が非常に複雑になるという問題点がある。改めて境界準同型∂をm_1、積をm_2とすると、本来Morseホモトピーでは高次の積m_3、m_4、…を構成する必要があるのだが、このtreeグラフによる不安定多様体の交叉の記述の複雑さの問題から現時点ではm_3以降の高次の積の具体的な構成には至っていない。
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