研究課題/領域番号 |
19K03496
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鎌田 直子 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 教授 (60419687)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結び目 / 仮想結び目 / 不変量 |
研究実績の概要 |
2019年度は拡張結び目の1つである仮想結び目について研究成果が得られた。仮想結び目は幾何学的には厚みのある有向閉曲面内の結び目の安定同値類に対応している。結び目は、厚みのある2次元球面内の円周の同値類であるため仮想結び目は結び目のある種の拡張であると考えられる。結び目ダイアグラムは結び目の2次元球面への射影図でその二重点に上下の情報を与えたものである。仮想結び目ダイアグラムは結び目ダイアグラムに仮想交点を許して定義される。 結び目ダイアグラムのアークにあるルールをつけて番号をつけることをAlexander numberingという。すべての結び目ダイアグラムはAlexander numbering可能であるが仮想結び目ダイアグラムは可能でないものもある。Alexander numbering可能な仮想結び目ダイアグラムをalmost classicalという。このalmost classical 仮想結び目ダイアグラムを代表元としてもつ仮想結び目をalmost classicalという。2019年度は仮想結び目ダイアグラムからalmost classical 仮想結び目ダイアグラムへの写像を構築した。その写像を利用して仮想結び目からalmost classical 仮想結び目への写像(almost classical化写像)を導いた。 結び目不変量は結び目を分類する道具である。その1つであるGeoritz不変量は結び目ダイアグラムの正規性を利用して定義される。仮想結び目ダイアグラムには非正規なものもあるため、仮想結び目に自然に拡張できない。almost classical仮想結び目は正規性を持つ。そこでalmost classical化写像を利用して仮想結び目にGeoritz不変量を定義し、その応用例を示した。これらの研究成果は研究集会、国際会議で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
拡張結び目に対して幾何的構造の究明、不変量の性質の解明、不変量を含めた新たな研究手法の確立することが本研究の目的である。 結び目から自然に拡張結び目に定義することが容易でない不変量や研究手法を拡張結び目に定義することは新たな研究手法の確立する方法の1つである。 Almost classical仮想結び目は結び目に近い性質を持つ仮想結び目であり、Almost classical仮想結び目に結び目の研究手法を適応することが可能な場合もある。そのような観点から見ると仮想結び目から almost classical 仮想結び目への写像を構成してその写像の像に結び目の研究手法を適応することによって新しい研究手法の確立が期待される。2019年度は仮想結び目からalmost classical仮想結び目の写像(almost classical化写像)を構築した。 結び目を分類する道具である不変量は仮想結び目に自然に拡張される場合もある。しかし,Georitz不変量は自然に拡張されない。それは結び目ダイアグラムの正規性を利用して定義されており,正規性を持たないダイアグラムが存在する仮想結び目には自然に拡張することはできない。Almost classical仮想結び目ダイアグラムは正規性をもつ。そこでalmost classical化写像を利用して仮想結び目のGeoritz不変量を定義し、応用例を示した。以上より概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
拡張結び目に対して不変量を含めた新たな研究手法の確立することが本研究の目的の1つである。2019度は拡張結び目の1つである仮想結び目に対して定義した仮想結び目からalmost classical仮想結び目への写像を定義した。この写像からGeoritz不変量を定義し、新たな研究手法を提案した。この写像の発展と応用をめざし、さらに新たな研究手法を確立することを目標とする。 拡張結び目に対して幾何的構造の究明、不変量の性質の解明、結び目や曲面結び目の研究への応用も本研究の目的である。 幾何学的特徴をもつ拡張結び目のクラスを調べるために、そのような拡張結び目のクラスを中心に様々な不変量の値を計算し、その結果を精査し不変量の性質を探る。 結び目や曲面結び目の研究への応用するために、溶接結び目の新しい研究手法の確立、溶接結び目とリボン型のトーラス曲面結び目との関係の一般化、向き付け不可能な曲面の研究に新しい研究手法の導入を試みる。
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