研究課題/領域番号 |
19K03503
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
野原 雄一 明治大学, 理工学部, 専任准教授 (60447125)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ミラー対称性 / 旗多様体 |
研究実績の概要 |
A型(特殊線型群)の旗多様体のミラー対称性について、特に、特殊線型群の表現論(旗多様体上の複素幾何)とミラー多様体のLagrange部分多様体に対するFloer理論(シンプレクティック幾何)との関係について研究している。Strominger-Yau-Zaslowによるミラー対称性の描像では、ミラー対は双対Lagrangeトーラスファイブレーションの構造を持ち、旗多様体上の正則直線束がミラー側のトーラスファイブレーションのLagrange切断に対応する。これより、正則直線束のコホモロジーがLagrange切断のFloerホモロジーと同型になるはずである。Borel-Wiel理論により、特殊線型群の既約表現はすべて直線束のコホモロジーとして実現できるため、ミラー側で対応するFloerホモロジーの表現論的性質を調べることは自然な問題である。本研究では、Lusztig、Berenstein-Zelevinsky らにより導入された表現の“標準基底”と、ミラー側のLagrange切断の交点たちが与えるFloerホモロジーの“標準的”な基底の関係について調べている。2022年度は、複素3次元の旗多様体の場合(すなわち、3次特殊線型群の場合)に直線束のコホモロジーの“標準基底”がミラー側のLagrange切断の交点と対応すること、さらに直線束の正則切断の積構造がミラー側のFloerホモロジーの積構造と対応することを、一部の技術的な問題を除いて確認した。これを厳密な証明にするためには、角付き多様体上でFloer理論を行う際に生じるいくつかの問題を解決する必要がある。これが2023年度の目標となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
旗多様体のミラー多様体上でLagrange切断のFloerホモロジーを定義するためには、角付き多様体上で正則円板の解析を行う必要があるが、ここで考えている旗多様体の場合には、Lagrangeトーラスファイブレーションの特異ファイバーが角付き多様体の境界にも現れることが問題となる。既存の結果にはこのような状況を扱ったものがないため、新たな工夫が必要となる。この技術的な問題の解決に時間がかかっているため、当初の予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定より時間はかかっているが、2022年度の研究で3次元旗多様体のミラー側に現れる角付き多様体の様子が具体的に分かってきたので、2023年度も引き続きLagrange切断に対するFloer理論の研究を進める。可能であれば、3次元旗多様体と状況がよく似ている4次元Grassmann多様体の場合の研究も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度もオンラインでの研究集会が多かったことに加え、毎週拘束時間がある学内業務があったため、研究集会参加のための旅費をあまり使用できず、次年度使用額が生じることとなった。 最近は対面での研究集会が増えてきているため、2023年度は研究出張のための旅費の使用が増えると考えられる。研究に必要な文献のための予算については、当初の計画と同程度を予定している
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