研究実績の概要 |
3次元多様体の基本群のSL(2;C)-既約表現を考える. 多様体と表現の組に対してReidemeister torsionは定まり, これはSL(2;C)-指標多様体の上の複素数値関数を与える. この関数の振る舞い, 特にその値の像について, 研究を行い, 次のような結果を得た. これらについては野崎雄太氏との共同である. 1. 3次元球面内の8の字結び目に沿ったデーン手術から得られる3次元多様体に関して, SL(2;C)-既約表現から定まるReidemeister torsionの値は代数的整数となることを示した. これについては, 以前にMathematicaを用いた数値的な計算により, ある程度の範囲でそうなることが分かっていたが, 今回理論的に成り立つことが確かめられた. 2. 8の字結び目を含むツイスト結び目の中のあるクラスにおいて, この結び目に沿ったデーン手術から得られる3次元多様体に拡張されるようなSL(2;C)-既約表現に関して, この結び目の外部のReidemeister torsionの値が代数的整数であることを示した. 3. 緩やかな条件を満たしたBrieskorn多様体に対して, その値が常に代数的な整数であることを証明した. これに関しても, 以前には, トーラス結び目のデーン手術で得られるような, より狭いクラスに関しては確かめられていたものを今回, より一般の場合に証明した. 4. これらと関連して, 2つの2橋結び目のスプライシングで得られるホモロジー3球面に対して, 2つの結び目のうちに一つに関してある条件を課すと, Reidemeister torsionの像は無限集合となることを示した. これに関しても以前の野崎氏との共同研究において, 値が有限集合となる例を考察していたが, そうなってはいない例の構成について考察をした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍によって, 国内外の移動に制限が加わっていること, さらに研究活動以外の部分での行動制限などが影響した. 共同研究の打ち合わせが全てオンラインになっており, 特に海外の連携研究者との打ち合わせは時差も関係して, 設定に難しいところもあった. これらのことから進展が遅れていると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍も3年目となり, 一昨年に比べれば昨年はさまざまな部分, 特にオンラインでの研究活動に関して, 対応できるようになってきたので, 今年度はさらにそれらをうまく活用をしていく. また, 人の移動も徐々に可能になってきているので, 国内外の連携研究者と直接会って議論, 検討を行う場を作ることを計画していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続きコロナ禍であったため, 予定していた海外からの研究者の招聘, および海外出張ができなかったために, そのための予算が使えず, 次年度使用額が生じた.
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