研究実績の概要 |
任意の群の直積には,ブレイド群によるHurwitz作用が定義される。ブレイド群の直積をHurwitz作用で軌道分解することで,ブレイドの2次元版である曲面ブレイドを完全に分類できることが知られている。しかし,ブレイド群は複雑であるため,ブレイド群の直積における軌道分解は非常に難しく未解決である。本研究は,ブレイド群からのJohnson写像や対称群を用いて,ブレイド群の直積のHurwitz同値不変量を構成し,曲面ブレイドの未知の性質を発見することを目的としている。本年度の進捗状況は, 1.ブレイド群からの第1Jhonson写像への幾何的な意味付け(ホモロジカルな意味付け)に関する論文の執筆に時間を割くことができた。今年度中には投稿できる見込みである。この研究は津田塾大学の久野雄介氏との共同研究である。 2.3次の対称群の直積におけるHurwitz軌道分解についての研究成果を論文として書き上げることができ,海外の雑誌に投稿した。(現在査読の段階である。)また,4次の対称群の直積の部分集合で,長さ4の巡回置換のみを並べてできる組の集合をHurwitz作用で軌道分解することに成功した。この成果を,2020年1月に岡山大学で開催されたHurwitz作用の研究集会で発表した。 3.群馬工業高等専門学校の碓氷久氏と諸岡勇希氏との共同研究により,ブレイド群の複雑さを生かして,ブレイド群の直積におけるHurwitz作用と同時共役による鍵共有を考案した。(Ki Hyoung Ko, Sang Jin Lee, Jung Hee Cheon, Jae Woo Han, Ju-sung Kang, Choonsik Parkによるブレイド群の共役を利用した鍵共有との相違点もある。)この内容を2019年6月に金沢大学で開催された暗号理論に関する勉強会で始めて発表した。
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