研究課題/領域番号 |
19K03508
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
矢口 義朗 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (90613018)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ブレイド群 / 対称群 / Hurwitz作用 / 単純ブレイド / 単純曲線 |
研究実績の概要 |
任意の群(さらにはカンドル)の直積には,ブレイド群(組みひも群)によるHurwitz作用が定義される。ブレイド群の直積をHurwitz作用で軌道分解することで,ブレイドの2次元版である曲面ブレイドを完全に分類できることが知られている。しかし,ブレイド群は複雑であるため,ブレイド群の直積における軌道分解は非常に難しく未解決である。本研究は,ブレイド群からのJohnson写像や対称群を用いて,ブレイド群の直積のHurwitz同値不変量を構成し,曲面ブレイドの未知の性質を発見することを目的としている。また,単純曲面ブレイドの1つの分岐点の周りのモノドロミーは,穴あき円盤内のコード(連結な単純曲線)と同一視できることが知られており,単純曲線そのものの研究も必要不可欠となる。 【前提】研究代表者は,4次対称群の直積の部分集合で『長さ4』の巡回置換のみを並べてできる組の集合におけるHurwitz軌道分解を2019年度に,『長さ3』の巡回置換のみを並べてできる組の集合におけるHurwitz軌道分解を2020年度に遂行できている。 【2021年度の成果1】上記の成果の一部を一般化した,次の命題を得た:「群(共役カンドル)Gの2つの部分カンドルS,Tについて,Sの任意の元がTの2つの元の積として(Hurwitz同値の意味で)一意的に分解できるとき,Sのn個の直積のHurwitz同値類の集合からTの2n個の直積のHurwitz同値類の集合への自然な全射が存在する。」ここでGは一般の群であるので,この結果の曲面ブレイド以外への応用も見込まれる。 【2021年度の成果2】群馬大学の山本亮介氏と共同で,穴あき円盤の「基本軸」との交点数の組でパラメータ付けられた(連結とは限らない)単純曲線の連結成分数を求めるためのアルゴリズムを,幾何学・代数学の別々の観点から2種類作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実績は,2020年度の【今後の研究の推進方策】に記載したものとは(具体的なことについては)少し異なるものとなったが,上記の【成果1】で報告したような一般の群GにおけるHurwitz同値の性質の発見や,【成果2】で報告したような単純曲線の成分数を求めるアルゴリズムの作成(群馬大学の山本亮介氏との共同研究)など,本研究課題の目的・方向性に合った形で研究が進展した。 したがって,本年度については「(2)おおむね順調に進展している」と評価する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標は,ブレイド群からのJohnson写像や対称群を用いて,ブレイド群の直積のHurwitz同値不変量を構成し,曲面ブレイドの未知の性質を発見することである。そこで今年度はこれまでに得られた成果を踏まえて,以下のことに取り組む予定である: 1.ブレイドシステムの集合の第1Jhonson写像による像をHurwitz同値で完全に分類することを目標とする。 2.対称群の直積におけるHurwitz軌道分解の研究を更に進めていきたい。特に次の段階では,4次の対称群の直積「全体」においてHurwitz軌道分解を推進していく予定である。 3.山本亮介氏と共同で作成した,穴あき円盤内の単純曲線の連結成分数を求めるための2種類(幾何的・代数的)のアルゴリズムについて,それらの間に関係を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(次年度使用額が生じた理由)本年度は新型コロナウイルス流行により,研究集会等はすべてオンライン開催に置き換わり,旅費の支出分が0であったことから。 (使用計画)直接対面で情報交換ができない分については,海外の数学雑誌などを購入し情報収集を行う。また,新型コロナウイルスが収束したのち,各地で開催される研究集会に積極的に参加し,情報収集・研究成果の発表を行う。
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