研究課題/領域番号 |
19K03510
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
田中 仁 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 講師 (70422392)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Hausdorff content / Fefferman-Stein型不等式 / n重線形埋蔵定理 / Hardy-Littlewood最大作用素 / 分数べき積分作用素 / 正作用素 / sparse作用素 |
研究実績の概要 |
荷重の理論は、作用素の荷重付ノルム不等式を統制するための理論です。それは、作用素の値域に関する情報を陽的に示すことのできる理論です。本研究では、いくつかの作用素について荷重の理論の進化と精密化とを企図しています。 (A)種々の作用素について、Hausdorff contentという量により定義されたL^p空間において、Lebesgue測度では得られない量的により精密な荷重の理論を研究しました。(B)分数べき積分作用素について、そのborderlineにおけるFefferman-Stein型の不等式のOrliczノルムを用いた精密化を企図して研究しました。(C) Hausdorff contentという量により定義されたL^p空間において、その共役空間の特徴付けを与える研究を進めました。(D)正作用素に対して、2荷重のFefferman-Stein形の弱ノルム不等式を研究しました。(E) n重線形埋蔵定理を、荷重にA∞条件を課した枠組みにおいて研究しました.
(A) L^p空間を、Lebesgue測度に変えてHausdorff contentという量により定義します。すると、1よりも真に小さな指数でHardy-Littlewoodの最大作用素は有界となることが知られています。不思議なことに、この1より小さな指数の範囲では種々の作用素についてLebesgue測度では得られない量的により精密な荷重の理論が展開できることが本研究を通して明らかにされました。この空間が実はBlock分解可能であるという単純な構造を持っていることを新たに見出し、それに依拠して量的により精密な荷重の理論を展開しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(B)近年、加重の理論の進展を受け、複雑な得意積分作用素が圧倒的に単純なsparse作用素により各点において支配されることが明らかにされました。Carlos Domingo-Salazar, Michel Lacy, Guillermo REYは、sparse作用素をさらに丹念に分解することから、得意積分作用素のborderlineにおけるFefferman-Stein型の不等式のOrliczノルムを用いた精密化に成功しました。本研究ではこの新たな手法を適用することで、分数べき積分作用素のborderlineにおけるFefferman-Stein型の不等式のOrliczノルムを用いた精密化を企図して研究を進めています。ずいぶん時間をかけて調べています。しかし、目標としている結果は未だ得られていません。 (C) Hausdorff contentという量により定義されたL^p空間の共役空間の理論は、D。 R。 Adamsの基本的な論文“Choquet integrals in potential theory”Publ。 Mat。, 42 (1998), no。 1、 3--66において展開されています。この論文において、基礎付けとなる一つの不等式の証明に明らかな不備を発見し(不備であることの反例を示しています)、改めてその証明を与えることに成功しました。 (D)上記(B)の研究を進める中で、borderlineの外では、2荷重のある種のFefferman-Stein型の弱ノルム不等式が成立することを発見しました。 (E) 以前の研究で、n重Wolffポテンシャルを用い、n重線形埋蔵定理を示しました。本研究では、複雑なn重Wolffポテンシャルに変えて、荷重にA∞条件と呼ばれる過程を課して、n重線形埋蔵定理が成立するための必要十分条件について研究を進めました。
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今後の研究の推進方策 |
(A)については基本的に完成されたものと考えています。しかし、この空間について「block分解可能である」という本研究で新たに見出した事実の応用を進めます。 (B)については多くの時間を費やして考えてきました。sparseの尺度と分数べきの尺度が異なっているところが難しさの原因となっています。研究を進めるうちに、Lacy等の非常に興味深い基本的な手法を我々の問題に適用することは正しくないということが明らかになりました。すなわち、我々の問題は彼らの手法を適用すべき範疇の外に存在していることが見えてきました。そして、現在我々の問題は初等的な幾何的問題に帰着できるであろうことが分かっています。この幾何的問題の解決を進めます。 (C)についても本研究で見出した手法を応用できる新たな研究を進めます。 (D)この研究については論文の作成を急ぎます。 (E)この研究は対応する最大作用素の何らかの不等式が必要十分条件となるであろうと予想しています。実験をさらに重ねる必要があります。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、新型コロナウイルスの感染拡大による社会の混乱に大きく翻弄され、適切な研究費の執行が困難でした。本年度は適切に研究を進めたいと思います。
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