研究実績の概要 |
アフィン遮蔽作用素に付随した遮蔽頂点作用素を用いて, 形式的無限級数 f(x,p|s,kappa|q,t) を導入した. それはアフィンLaumon空間のオイラー指標を与える. スペクトルパラメータ s と 非定常性パラメータ kappa を適当に選ぶとき, 極限 t=q において f(x,p|s,kappa|q,t) は, A^(1)_{N-1} 型アフィンリー環 の主整指標になることが示された. また, 級数 f(x,p|s,kappa|q,t) に関する幾つかの予想が得られた (以下の項目,1 から 4). (1) 双対性予想: bispectral, 及び, Poincare duality が成り立つと予想される. bispectral dualityは, 変数xとsの入れ替えに関する不変性, Poincare dualityはパラメータtをq/tに取り換えることに関する不変性を指す. (2) 主予想: (i) 級数f(x,p|s,kappa|q,t) を適当に規格化すれば, その極限 kappa=1 を取ることができる, (ii) それを f^st(x,p|s|q,t) とすれば, f^st(x,p|s|q,t) は 楕円Ruijsenaars作用素の固有関数を与える. (3) Poincare duality に関する予想の affine Toda limit t=0 を考察することで, 非定常アフィン q-差分戸田作用素 T(kappa) を導入した. (4) 特に アフィンq-差分戸田 (t=0), 及び, 楕円Calogero-Sutherland 方程式の極限(q,t=1)において, 主予想の意味することを吟味した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の形式的無限級数 f(x,p|s,kappa|q,t) の表現論的構成 (affine screening operator), 幾何学的意味付け(affine Laumon space)に着手することができた. また, 級数 f(x,p|s,kappa|q,t) の性質に関するいくつかの予想, (双対性予想, 主予想, 及び, それらから派生する幾つかの性質)を発見することができた. ただし, elliptic Ruijsenaars operator の非定常的拡張については今後解決しなければならない問題として残されている. この方面の当面の進歩として, 非定常なaffine q-差分Toda方程式を提案することができたことを注意しておく. 現在のところ, 幾何学的な背景が確立していない, BC型のKoornwinder-Macdonald系や, その非定常-楕円類似の構成の可能性については全く不明である.
|
今後の研究の推進方策 |
級数 f(x,p|s,kappa|q,t) の性質に関する予想に対して証明を与えたい. 現在, 残念ながら, そのうまい糸口を掴み切れていないが, 次のような方向からのアプローチを考えている. (1) affine screening operator の成す代数の表現論を整備して, その枠内で topological vertex operator として特徴付けられること, その topological vertex operator の行列要素に関する基本的性質(AGT予想に準拠する)を明らかにする. (2) 必要に応じて, 多変数超幾何級数の変換公式(梶原・野海の双対変換公式の類似)を確立し, 級数 f(x,p|s,kappa|q,t) の性質を証明する. 非定常的な elliptic Ruijsenaars operator の拡張を研究する. この方面は, 非定常なaffine q-差分Toda方程式を研究推進のための梃子として進むことができると期待される.
|