研究実績の概要 |
本研究課題では自由確率論におけるレヴィヒンチン型表現の研究を行っている. 確率分布に対してその特性関数がレヴィヒンチン型表現を持つものと持たないものがある. 前者の中で特にレヴィ測度が符号付き測度ではなく測度であるとき, それは擬無限分解可能分布となる. 本研究課題ではこの自由確率論における類似を研究している. 自由確率論における無限分解可能分布(自由無限分解可能分布と呼ばれる)は確率論における無限分解可能分布との間で全単射をもつ. この全単射は確率論における無限分解可能分布のフーリエ変換に対する解析的表現であるレヴィヒンチン表現における三つ組と自由無限分解可能分布のR変換(自由確率論におけるフーリエ変換のlogの対応物)に対する解析的表現であるレヴィヒンチン表現における三つ組を通して定義でき, Bercovici-Pata全単射と呼ばれる. 令和3年度は令和2年度調べたコーシー分布のF変換について従属操作を考えるArizmendi, Tarrgo, Vargasの研究を応用した例をさらに深めレヴィヒンチン型表現の三つ組で自由擬無限分解可能分布、擬無限分解可能分布両方で対応する分布が存在するようなものを見つけた. これにより上記のBercovici-Pata全単射という自由無限分解可能分布、無限分解可能分布間の全単射の定義域を広げることに成功した. 当初予定していたよりも深い結果が出たため昨年度準備していた論文を加筆し、プレプリントとしてまとめ確率論専門雑誌に投稿した.
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