まず最終年度の成果について述べる。本年度は昨年度の予定を変更して、本年度に科研費の繰越により予定していたOctavio Arizmendiらのメキシコ人の招聘し、 本研究課題の総括と今後の方針について検討した。また特に彼らを含めた20名以上の海外からの訪問者を含む大規模なランダム行列についての研究集会を開催することに成功しm、その中でさまざまな情報を収集することに成功した。 次に期間全体を通しての成果について述べる。本研究課題は確率論で擬無限分解可能分布の例が増えてきており、無限分解可能分布より広いクラスが注目されるようになってきている中、自由確率論においても、数値計算等の結果から自由擬無限分解可能分布の例が存在しそうであるというスタートした。出発点としては擬無限分解可能分布を畳み込みの関係式から定義するか、レヴィヒンチン表現の形から定義して考えるかということがあったが、自由調和解析的な手法を用いるため後者を選択し、近年Octavio Arizmendiらの考えた従属操作法を使った自由畳み込み分解のアイデアを援用することで自由擬無限分解可能分布の例が存在することを示すことに成功した。それだけにとどまらず、Bercovici-Pata全単射と呼ばれる、無限分解可能分布と自由無限分解可能分布をつなぐ写像の定義域を拡張することに成功した。ここでは確率論におけるレヴィヒンチン型表現に対応する確率分布が存在するかということが問題となったが、その点について解決できたのは大きかった。
|