研究実績の概要 |
複素解析的線形微分方程式論において接続問題が解けている多変数函数の例は非常に少ない.そこで,Appell, Lauricellaによる古典的多変数超幾何函数からHeckman-Opdamの超幾何函数や共形場理論のKnizhnik-Zamolodchikov方程式の解など現代的多変数超幾何函数に至るまでの接続問題を総合的に考察することで,一般のn変数で解ける例の多くを発見・蓄積・整理し,可積分な偏微分方程式系の解の大域的理論のさらなる発展の礎を作ることを目的とする.その方法論は,Erdelyiサイクルの高次元化とねじれホモロジー理論における交叉数による.
本年度の主な研究内容は次の通り.(1) LauricellaのE_D方程式に関する接続問題:方程式の特異点(1,...,1)における正則解を原点の近傍における解の基本系で表示するという形の接続問題をErdelyiサイクル上の積分による積分表示を用いることにより解き,それを応用してA型Heckman-Opdamの超幾何函数(の特別な場合)のHarish-Chandra展開公式におけるc函数が先の接続問題の接続係数に他ならないことを示した.(2) LauricellaのE_A方程式に関する接続問題:2変数の場合(ApplellのF_2の場合),HornのH_2函数とOlssonのF_P,F_Q, F_R函数が解空間の様子を調べるためには重要であるが,これらの多変数版をErdelyiサイクルを用いて明示的に導いた.そして,それを利用することによって,複数の接続公式を導いた.
これらを含む接続公式については,12月のイタリア・パドヴァにおいて開催された ``MathemAmplitudes 2019:Intersection Theory and Feynman Integrals''で講演した.
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