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2023 年度 実施状況報告書

普遍被覆写像の変形に関するレブナー理論

研究課題

研究課題/領域番号 19K03519
研究機関山口大学

研究代表者

柳原 宏  山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30200538)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2025-03-31
キーワードuniversal covering / Loewner chain / evolution family / Julia's lemma / distortion estimate
研究実績の概要

レブナー理論とは,複素平面内の双曲的な単連結領域の時間発展による変形を時間変数と複素変数による偏微分方程式で記述するものである. そしてこの記述=表現を用いることにより, 写像函数の制御が可能となる. 本理論は20世紀初頭に導入され古典的と見做されていたが,21世紀に入り統計物理との関係が見出され,現在活発に研究が行われている.
本研究課題の先行研究により, レブナー理論において取り扱う対象である領域が単連結に限られるという従来の制約を取り外すことが可能になった.ただしこの場合,対象とする領域が多重連結になるので,取り扱う写像が等角(単射かつ正則)写像から, 普遍被覆写像に変更を行う必要がある.
2023年度においては前年度に引き続きレブナー鎖を取り扱う際に必須のツールである,角微分係数に関する Julia の補題について研究を行った.Julia の補題の精密化, 及び増大度評価から歪曲評価への変更についてさらなる進展を試みた.stochastic なレブナー理論においては,上半平面における半平面容量という等角不変量が重要な役割を果たすが,これの単位円板での対応する量が角微分係数であるから,これからの応用が期待できると考えている.またレブナー鎖に付随する evolution family の連続性についても,前年度の研究を踏まえ研究を深化させるように試みた.従来は時間に関する正規化と呼ばれる強い微分可能性を課してきたが,これを緩めた連続 evolution family という新しいクラスを提案したが, これに関する高次元化などを考えた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究の内容自体は,おおむね順調に進展している.この2023年度の夏にインドのPondicherry 大学で開催された有限次元・無限次元複素解析に関する国際研究集会において plenary talk を行うことができた.また招待講演を終えた後にインド工科大学 Bhubaneshwar 校の Vasudevarao教授のもとに1週間滞在し,教授本人並びに当大学の若手研究者数名と様々な話題について議論を行い大変有意義な時間を過ごすことが出来た.しかしながら帰国後,急に体調が不良となり予定していた東北大や東工大への出張や, 本研究と関係が深い研究者の招聘について取り止めざるを得なかった. 12月に入り漸く体調が回復してきて, 等角写像論・値分布論の定例の研究集会に参加と講演を行うことができた.また東北大の須川教授,インド工科大の Ponnusamy 教授とのリモートでの研究打合せがある程度出来た.
2024年の12月にインド工科大学Indore 校の Sahoo 教授のもとを訪問し,当大学で開催予定である国際研究集会に参加し,講演を行う予定であり,VISAの発給に必要な情報の交換や日程調整を進めている.

今後の研究の推進方策

2023年度は東北大や東工大への出張や, 体調不良の為に取り止めざるを得なかった. しかしながら東北大の須川教授,インド工科大の Vasudevaro 教授とのリモートでの研究打合せがある程度出来た.今後もこのようなリモートでの活動を引き続き行って行きたい.
またこれからの研究の主体となるのは前年度までの研究に引き続き,単位円板から自身への正則写像に関する Julia の補題,及びそれにまつわる歪曲評価について, 上半平面から自身の中への正則写像についての対応を考えることである. 直接的な変換を行っても単位円板上での歪曲評価は,上半平面での歪曲評価には結びつかない. これを乗り越えるには何らかのアイデアが必要である. しかしながら stochastic レブナー方程式などの研究では半平面容量という概念が大きな役割を果たすが, これの単位円板での対応物が角微分係数であり, Julia の補題の中心的な対象である. 従って単位円板で成功した手法を修整することにより, 上半平面での歪曲評価に成功すれば stochastic レブナー方程式への応用があるのではと考えている.
また普遍被覆写像の像領域をリーマン面に拡張することも視野に入れて行きたい. このときの問題は像のリーマン面の種数がどのように変化するかであり, まだ殆ど知見は得られていないので, 手付かずの問題が残っていると予想される.

次年度使用額が生じた理由

2023年度に体調不良の為に,予定していた一橋大,東北大などの国内の研究者との研究打ち合わせを取りやめにしたため残額が生じてしまった.
2024年度には東北大学で8月に開催予定の,有限次元・無限次元複素解析国際会議に参加し海外の研究者らと交流し,研究打合せを行う予定である. またこの会議に参加予定の海外の若手研究者を研究者代表者の勤める山口大学に招聘を行いたいと考えている.

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] The Sharp Distortion Estimate Concerning Julia’s Lemma2023

    • 著者名/発表者名
      Hoshinaga Shota、Yanagihara Hiroshi
    • 雑誌名

      Computational Methods and Function Theory

      巻: 24 ページ: 53~82

    • DOI

      10.1007/s40315-023-00505-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Continuous evolution families2023

    • 著者名/発表者名
      Hoshinaga Shota、Hotta Ikkei、Yanagihara Hiroshi
    • 雑誌名

      Proceedings of the American Mathematical Society

      巻: 151 ページ: 5251-5263

    • DOI

      10.1090/proc/16481

    • 査読あり
  • [学会発表] Continuous Evolution Families2024

    • 著者名/発表者名
      星長翔太, 堀田一敬, 柳原宏
    • 学会等名
      「等角写像論・値分布論」合同研究集会
    • 招待講演
  • [学会発表] Loewner Theory on Analytic Universal Covering Mappings2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Yanagihara
    • 学会等名
      The 29th ICFIDCAA-2023
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2024-12-25  

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