研究課題/領域番号 |
19K03521
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
木村 弘信 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 名誉教授 (40161575)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超幾何函数 / 行列積分 / holonomic系 / Radon変換 / Capelli恒等式 / 隣接関係式 |
研究実績の概要 |
本研究の目標はGauss の超幾何函数とその合流型函数の一般化としてGel’fand と申請者によって導入されたGrassmann 多様体 Gr(2,N) 上の一般超幾何函数の 積分表示をHermite行列積分の形で拡張し,これらを統御する holonomic系の構築と非線形可積分系との関係を明らかにし, Lie 群論(対称錐の幾何)の視点から特殊関数論 を構築することとしている。 今年度は,昨年度に引き続き, 本研究の目標のGr(2,N)上の一般超幾何函数の行列積分版を理解するために, Radon変換の視点から行列積分で定義される超幾何函数(Radon超幾何函数)の研究を行なった. 得られた知見は以下の通り. (1) Gr(m,N) 上のN の任意の分割に対するGelfand超幾何函数を行列積分としてRadon変換の立場から拡張した超幾何函数に対して,それに含まれているパラメータaをa+1あるいはa-1と変化させた場合の超幾何函数との間の微分関係式である隣接関係を与えた. (2) (1)の隣接関係式が得られる理由は,古典的なCapelli恒等式から得られるCayleyの公式にあることがわかった.これは概均質ベクトル空間の理論における相対不変式とb函数の理論の古典的な場合に相当する. (3) Radon超幾何函数を統御する微分方程式がholonomic系であることはまだ証明できていないが,これがholonomicでその特異点を含まない領域がHemite積分で与えられる超幾何函数の定義域を含めば, Faraut -Koranyi等が得ていたHermite積分超幾何函数に対する隣接関係式についての結果を完全にし,それを大幅に一般化することを可能にすることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の本研究の計画の目標には到達していないが, Radon変換という新たな視点で研究対象を理解することになり,その結果としてCapelli恒等式などの不変式論が特殊関数論における隣接関係式で重要な役割をすることが認識できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
Radon変換の視点から, 行列積分で定義される超幾何関数の研究をさらに深化させたい. 特に関数を特徴付ける微分方程式系がholonomic系であることや, 解空間の次元,解空間の基底の決定が重要である. また,現在扱っているのはA型単純Lie群(代数群)に付随するHermite対称空間であるGrassmann多様体上のRadon変換による超幾何函数である.他のHermite対称空間についても超幾何微分方程式がTanisakiによって考察されている.この場合に解の積分表示の具体形と関連する位相幾何学的な問題や概均質ベクトル空間におけるb函数との関連を詳しく調べてみたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延により,研究集会への参加や研究連絡に伴う出張ができなくなり,旅費が全然使用できなかったことが最大の原因である.次年度には状況 が改善次第,研究連絡などによる研究の活性化を図るために科学研究費を使用したい.今年度は外国出張も予定している.
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