研究実績の概要 |
本研究の目標はGauss の超幾何函数とその合流型函数の一般化としてGel’fand と申請者によって導入されたGrassmann 多様体 Gr(2,N) 上の一般超幾何函数の 積分表示をHermite行列積分の形で拡張し,これらを統御する holonomic系の構築と非線形可積分系との関係を明らかにし, Lie 群論(対称錐の幾何)の視点か ら特殊関数論 を構築することとしている。 今年度は,Gr(2,4) 上の一般超幾何函数の積分表示をHermite行列積分の形で拡張したものの満たす微分方程式,そのholonomy性の研究及びLauricella超幾何函数の隣接関係の研究を行なった. 得られた知見は以下の通りである. (1) Gr(2,4) 上の4の任意の分割に対するGelfand超幾何函数を n次のHerimite行列に関する積分として拡張した超幾何函数に対して,その満たす微分方程式系を導出した.また,微分方程式を与える微分作用素が生成する微分作用素環のイデアルのGrobner基底を計算しそれらがholonomic系でそのrankが 2^nであることを示した.これらはGauss, Kummer, Bessel, Hemite-Weber,Airy関数の拡張に相当している. (2) n変数Lauricella超幾何函数F_A,F_BについてGelfand超幾何函数の立場から考察しそれらがGr(n+1,2n+2)の余次元 n の同じstratumにおける超幾何函数であることを示し,その隣接関係を与える微分作用素のなすLie環の構造を決定した.さらに隣接関係式を具体的に与える統一的な手法を与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の本研究の計画の目標には到達していないが, 長い間証明できていなかったHermite行列積分で定義されるHemite-Weber, Airy函数の拡張の満たす微分方程式を導出することができ,その微分作用素たちの生成する微分イデアルのGrobner基底を計算することにより,そのholonomy性が証明できた.加えてGauss, Kummer, BesselのHermite行列積分への拡張について,既にFaraut-Koranyiらが与えていた方程式を別の方法で導出できた.
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