研究課題/領域番号 |
19K03523
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西尾 昌治 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90228156)
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研究分担者 |
下村 勝孝 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (00201559)
竹内 敦司 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (30336755)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 再生核 / ベルグマン空間 / 放物型方程式 / 熱方程式 / 多重調和関数 / 多重放物型方程式 |
研究実績の概要 |
本研究は、方程式の解のなす空間を詳細に研究することで、放物型方程式の性質を浮き彫りにしようとすることを目的とした研究である。 取り扱う方程式は線型であるので、主に線型空間を考察することになるが、正値解のなす凸錐を考えることも非常に有効であり、正値調和関数との関連で現れてきたマルチン境界の理論の熱方程式版を構築し具体的な領域に対して詳細に調べることは本研究のテーマの一つである。そのためにアッペル変換のような解を保つ変換が有効であるが、この方向の研究としては、分担者の下村は、不定値形量をもつリーマン多様体上の熱方程式を考察し、その正値解を保つ変換の分類に関連した研究をすすめ、その一部を論文として発表した。また、日本数学会の特別講演において、一連の研究成果を概説し、本研究の位置付けを明確にした。 また、放物型ベルグマン空間として分数べき放物型方程式の解のなすヒルベルト空間や、付随した再生核を放物型ベルグマン核として導入し、それらの性質を調べることは本研究のもう一つのテーマである。ポテンシャル論でよく研究されてきたカップリング型の方程式との組み合わせで基本的な結果が、本研究の開始当初に得られ、その位置付けを調べるべく国際会議で発表を行った。その成果は現在論文としてまとめて投稿中である。また、名城大学で開催されたポテンシャル論セミナーにおける議論から理論の構成方法に対する考察が進み、その成果は日本数学会の函数論分科会で報告した。 本研究において主として取り扱う分数べき放物型方程式は確率論的には飛躍型確率過程と密接に関連している。研究分担者の竹内はその方向で研究を進め、部分積分公式を精密化させている。その成果は国際研究集会、論文、研究図書として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書の研究の方法に記載しているように、得られた結果はできるだけすみやかに学会などで発表することにより、その意義や方向性の位置付けを確認している。当該年度において国際会議をふくめ数件の研究発表を行っており、本研究申請時から計画されていた方向に向けて順調に研究が開始され進展していることがわかる。
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今後の研究の推進方策 |
研究をすすめる方向を見定めることは、成果の大きさや意義に直結するために非常に重要なことである。セミナーや研究打ち合わせを積極的に行うことによって最新の情報を得ることが求められる。そのために、国内で開催されているポテンシャル論関連のセミナー、例えば名城大学の鈴木紀明教授が定期的に主催するポテンシャル論セミナーなど、に積極的に参加し、発表を行う予定である。 具体的な研究テーマに関しては、多重放物型方程式の解の再生公式が得られたことから、その応用をまず考えていきたい。一つ目は重み付き空間を考察し、その重みを一般化することを考える。カップリング型の場合は、単独の場合と比べて再生核の形が複雑な挙動を示すことが示唆されており、それをうまく制御することによって双対空間の特徴づけへとつなげる構想である。二つ目は放物型ブロッホ空間をカップリングの枠組みで考察することである。この空間は、関数の微分が再生核の形に影響するので、さらに詳細な解析が必要である。まず、Bi-parabolic で力づくの計算を実行し、例を積み重ねていくところから始めなければならないと考えている。また、Caloric Morphism の研究もあと一歩で見通しよくまとめられるところまできているといえる。この機に研究打ち合わせを重ねて、さらなる進展をめざしたいところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定されていた研究集会が次年度に延期されたため、そのために当該助成金が生じた。これは翌年度分として請求した助成金と合わせて、旅費として使用する予定である。
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