研究課題/領域番号 |
19K03526
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
南 就将 慶應義塾大学, 医学部(日吉), 教授 (10183964)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Sturm-Liouville作用素 / ランダム作用素 / シュレーディンガー作用素 |
研究実績の概要 |
ランダム性を持たない一般化Sturm-Liouville作用素に対するスペクトル理論は、通常のSturm-Liouville作用素に対する理論からの小幅な修正により得られると考えられるが、細部に渡る確認作業が必要である。そのため、1910年にMathematische Annalen誌に掲載され、Sturm-Liouville作用素に対するスペクトル分解の一般論を最初に確立したH.Weylの古典的な論文とM.H.Stoneの1932年の著書を再検討する作業に着手し、現在も継続中である。 ランダムな一般化Sturm-Liouville作用素については、本研究の採択に先立って、空間的に減衰する因子を持つホワイトノイズをポテンシャル項とするシュレーディンガー作用素について調べていた。この作用素に対しては、ポテンシャル項を自由ラプラシアンの摂動として扱えないため、関数解析学の一般論が適用されない。特に減衰因子が2乗可積分でない場合は、作用素の下からの有界性が問題である。本研究でも引き続きこのモデルの解析に取り組んだが、2019年度には新しい知見は得られなかった。具体的にいうと、関数解析的な方法に代えて、作用素に対する固有値方程式に対してPruefer変換と呼ばれる操作を数種類ほどこし、解の漸近挙動を調べようとしたが、スペクトル・パラメータが負のときはいずれも不成功であった。 その他の活動として、2020年1月に学習院大学において Spectra of Random Operators and Related Topics という研究集会を開催した。それに合わせて、ソルボンヌ大学からFrederic Klopp教授を招聘し、上記の問題を含めて討論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Sturm-Liouville作用素に対するスペクトル理論は歴史が古く、関連する文献量も膨大である。本研究では、一般化された作用素の理論をその中に的確に位置づけることを目指しており、歴史的な文献も漏らさず検討しているため時間がかかっている。 一方、「研究実績の概要」欄に述べたような、空間的に非定常なランダム性を含む一般化Sturm-Liouville作用素のスペクトルを調べるにあたっては、関数解析的手法の限界に加えて確率論的手法も限られているため、ブレイクスルーに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)一般化Sturm-Liouville作用素のスペクトル理論を整備するため、引き続き歴史的な先行研究を精査する。また、行列値の超関数をポテンシャル項とするシュレーディンガー作用素のスペクトル理論も整備する。 (2)具体的なモデルに対するスペクトルの性質の解析については、超関数的なポテンシャル項を連続関数の列で近似する可能性、rough paths理論の適用の可能性など、今まで試みなかった方法を検討する。 (3)減衰因子を持つホワイトノイズをポテンシャル項とするシュレーディンガー作用素については、例えば減衰因子が2乗可積分の場合にスペクトルの正の部分が絶対連続になることがわかっている。この結果は現状の問題設定においては最良に近いものと考えられるので、ポテンシャル項が行列値の場合への拡張を試みたい。
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