研究課題/領域番号 |
19K03529
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
松井 優 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10510026)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 構成可能関数 / ラドン変換 / 超局所解析 / 特異点論 |
研究実績の概要 |
構成可能関数のラドン変換は,位相的オイラー数を測度にもつ積分論における,代数的な背景をもつ関数の,幾何学的な積分変換である.本研究では,これまで主にコンパクトグラスマン多様体間で行われてきたこの積分変換について,扱う多様体やクラスを一般化し,さまざまな位相的ラドン変換について,特に反転公式と像の特徴づけを中心に考察を行う.また,これらの位相的積分変換の様々な応用についても研究を行う.2020年度は,2019年度に得た知見を元に,具体例の構成や双複素関数の性質の解明を中心に研究を行った. まず,構成可能関数のラドン変換の研究について説明する.2020年度は2019年度に引き続き,アフィングラスマン多様体間の位相的ラドン変換について,幾何的な状況からの理論的な考察を行ったが,未解決部分の完全解明には至らなかった.また,2019年度から新たな方向性への拡張に向けて進めていた双複素数環上の解析学について引き続き研究を行った.2020年度は,双複素数環の対合的な環同型が引き起こす自己反転性を持つ多項式について,関数等式,係数の関係式やそれを特徴づける結果を得た.これらについては引き続き研究を行う. 次に,定義可能関数の位相的ラドン変換理論の研究について説明する.本研究では先行研究で取り扱えない部分の解決を目指して,定義可能関数の積分理論の見直しを行っている.2020年度は既存の積分理論の定義可能関数の積分理論への適用について考察した.線形性を満たす理論の構成が目標であるが,その構成には至っていない.また,応用について,2020年度は2019年度に引き続き具体例の計算を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は特に研究集会を含む研究交流の機会が極端に少なくなり,当初計画していた研究活動を行うことがほとんどできなかった.このような環境の大きな変化もあり,2020年度は中心的な研究課題である,旗多様体間の位相的積分変換理論,定義可能関数の位相的積分変換理論の理論構築について,大きな進展を得ることができなかった.一方で,当初の計画とは異なるが,新しい方向への拡張に向けた準備として2019年度から進めている双複素数環上の解析学については,いくつか新しい結果が得られた.今後徐々に新しい研究環境に適応し,2019年度,2020年度に得られた知見を元に,問題解決にあたる.
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今後の研究の推進方策 |
2019年度,2020年度に得た知見をさらに発展させる計画である.アフィングラスマン多様体の構成可能関数の位相的ラドン変換の像の特徴づけについて,幾何的な考察を活かしてこれまでの計算の精密化を行う.また,双複素関数の特異性に注目した扱いについて,幾何的な考察を行う.定義可能関数の位相的ラドン変換の研究について,新しい積分理論の構築を目指す.応用の研究について計算機および計算ソフトウェアを活用して,具体例の計算を効率よく行う.一般的な状況で結果が得られない場合には,すでに得られた具体的な状況についてより詳しく調べる. 研究を円滑に進めるために,特異点論,超局所解析,積分幾何をテーマとした国内外の研究集会,セミナーに参加し,研究成果発表を行うとともに,研究者とディスカッションを行ったり,国内外の研究者を招聘して研究集会,セミナー,ディスカッションを行い見識を広げ問題の解決にあたる計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の研究計画では,研究費を国内外の研究集会等への参加出張旅費や研究集会の開催における国内外研究者の招聘旅費に使用するとしていた.新型コロナウイルス感染拡大の影響で,2020年度の研究集会はキャンセルまたはオンラインとなり,参加のために旅費として研究費を使用することはなく,開催予定の研究集会も中止となった.現時点では,状況が好転した際に開催される研究集会等への参加出張旅費に研究費を使用する計画であるが,これらにも参加できない場合には,計算機などの研究環境の整備費用として研究費を使用する計画である.
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