研究実績の概要 |
Macdonald多項式のPieri公式とは,粗く言えば2つの多項式の積を1つの多項式の組合せ的な和を用いて表す公式であり“逆に”解く(1つの多項式を,重みの小さい2つの多項式の積の和で表す)ことができれば帰納的に多項式の明示公式が得られるが,一般には簡単ではない.これに対し, Lassalle-Schlosser(2006)は[Inversion of the Pieri formula for Macdonald polynomials. Adv. Math. 202]において,A型の場合に“逆に”解くことのできるPieri公式(解析的Pieri公式と呼ばれる)を構成し,対応するmatrix inversionを構成のもと,逆に解くことによってA型Macdonald多項式の明示公式を記述した.さらにLassalle(2010)は[An (inverse) Pieri formula for Macdonald polynomials of type C. Transform. Groups 15]において,2行型C型Macdonald多項式P_(r,k)(t^1/2,-t^1/2,(qt)^1/2,-(qt)^1/2)に対する解析的Pieri公式を構成し,その明示公式を記述した. 本研究では,大久保氏-白石氏との共同研究において, 鈎型C型Macdonald多項式P_(r,1^k)(t^1/2,-t^1/2,(qt)^1/2,-(qt)^1/2)に対する解析的Pieri公式や明示公式を構成し,鈎型C型的退化Koornwinder多項式P_(r,1^k)(a,-a,c,-c)に対する解析的Pieri公式の予想式を与えた.また,Schlosser氏との共同研究において,鈎型より一般的な重みを持つC型Macdonald多項式に対する解析的Pieri公式の予想式を構成した.これはLassalle(2010)と本研究の上述の公式を含んでいる. また,Macdonald多項式の漸近自由解については,白石氏との共同研究(2020)[Branching rules for Koornwinder polynomials with one column diagrams and matrix inversions. SIGMA, 16]において,パラメタtを0に特殊化した場合にB型漸近自由解のA型漸近自由解での分岐則の予想式を構成したが,大久保氏-白石氏との共同研究において,A型漸近自由解の隣接関係式を構成することにより証明に至った.
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