本研究では「有理関数」を共通キーワードとして、令和元年から主に次の2つの研究、「intrinsic metric に関する研究」と「Blashcke 積の幾何学的性質を調べる研究」を継続してきた。令和5年度は本研究課題の最終年度であるため、研究を進めることと並行して、今まで得られた成果をまとめる作業も併せて行った。 (1) intrinsic metric に関する研究については、Wangら (2021) によって与えられたポアンカレ円板上の5点定理に関連する研究を令和4年度から引き続き Vuorinen 氏、Rainio 氏と行った。この問題に関する新たな結果が得られたため成果を投稿し受理されたところである。また、同じく Vuorinen 氏、Kargar 氏と角度に着目した距離に関する研究を行い、得られた成果を投稿中である。さらに、そこから派生した興味深い問題があるため共同研究を継続している。 (2) Blaschke 積の幾何学的性質を調べる研究については、令和4年度に境界が楕円の領域上で Blaschk-like 写像を導入し、論文誌に投稿していたが、それが受理されオンライン版が公開されたところである。さらにその結果を利用して Blaschke 多角形の中心に関する問題にも取り組んだ。 この問題は Poncelet 多角形の中心(平均中心と重心)の集合が外側の楕円と相似になるという Shestakov (1814) が発見し Schwartz and Tabachnikov (2016) によって証明された問題とも関連がある。このように、Blashcke-like 写像を導入できたことにより新たな Blashcke 積の性質を見出すことが可能になったことも成果の一つである。
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