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2020 年度 実施状況報告書

量子スピン系における基底状態にスペクトルギャップを持つハミルトニアンの分類

研究課題

研究課題/領域番号 19K03534
研究機関東京大学

研究代表者

緒方 芳子  東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (80507955)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードSPT相 / トポロジカル相
研究実績の概要

昨年度に引き続きSPT(symmetry protected topological phase)相の研究を行った.物理系の時間発展はハミルトニアンと呼ばれる自己共役な作用素により与えられる.SPT相というのは, 基底状態(最低固有値状態の固有ベクトル)にギャップのあるハミルトニアンのうち,(自明相とギャップを保ちながら繋がっているという意味で) short range entanglementをもち.与えられた対称性を満たすものの分類である.二つのハミルトニアンは,対称性を保ちながら移り合う時同値とみなす.今年度は一次元フェルミオン系におけるSPT相の分類問題を考え、物理学者により予想されていたinvariantの存在を厳密に示した.さらに,2次元量子スピン系においても物理学者により予想されていたinvariantの存在を厳密に示した.
Lieb-Schultz-Mattis type theorem というのは, ある種の条件のもと, 「基底状態でスペクトルギャップが開いている」という状況は起こり得ない,という,本研究テーマと深く関わる定理である.これまで, 連続群についてはLieb-Schultz-Mattisをはじめとする数学的に厳密な結果が古くから知られていた. 一方有限群については,物理の論文で, MPSによる解析が知られていたが,数学的に一般の設定では知られていなかった. 以前田崎晴明氏との共同研究で, 一次元量子スピン系についてこれを行ったが今年度は田崎氏と立川氏との共同研究で新たな手法により新しい同種の結果を得た.
さらに,long range entanglement 相についても進展があった.Naaijkens氏と共に非自明なsuperselection sectorの存在が,long range entanglementの存在を意味することを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

エニオンの存在がlong range entanglementを意味するというのは、これまでずっと耳にしていたが、今回の仕事で初めて腑に落ちた気がする。これは嬉しい予想外であった。

今後の研究の推進方策

量子スピン系については1,2次元SPTの問題が解決できたので、今後はさらに高次元のSPTの問題について取り組んでいきたい.特に物理学者によって,異なる次元間の相の様々な関係が提唱されているが、この謎を明らかにしたい.
トポロジカル相についてエニオンとの関係をさらに深く理解していきたい。そのためには高次元ギャップ相の
性質について深く理解する必要がある.

次年度使用額が生じた理由

コロナのため出張ができなかった。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)

  • [雑誌論文] The classification of symmetry protected topological phases of one-dimensional fermion systems2021

    • 著者名/発表者名
      Bourne Chris、Ogata Yoshiko
    • 雑誌名

      Forum of Mathematics, Sigma

      巻: 9 ページ: 1-45

    • DOI

      10.1017/fms.2021.19

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] A classification of pure states on quantum spin chains satisfying the split property with on-site finite group symmetries2021

    • 著者名/発表者名
      Ogata Yoshiko
    • 雑誌名

      Transactions of the American Mathematical Society, Series B

      巻: 8 ページ: 39~65

    • DOI

      10.1090/btran/51

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Automorphic equivalence within gapped phases in the bulk2020

    • 著者名/発表者名
      Moon Alvin、Ogata Yoshiko
    • 雑誌名

      Journal of Functional Analysis

      巻: 278 ページ: 108422~108422

    • DOI

      10.1016/j.jfa.2019.108422

    • 査読あり
  • [学会発表] Classification of symmetry protected topological phases in quantum spin chains2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 学会等名
      CURRENT DEVELOPMENTS IN MATHEMATICS
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Classification of symmetry protected topological phases in quantum spin systems2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 学会等名
      IAMP ONE WORLD IAMP MATHEMATICAL PHYSICS SEMINAR
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] The classification of symmetry protected topological phases of one-dimensional quantum systems2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshiko Ogata
    • 学会等名
      作用素環論研究者シンポジウム 作用素環論の最近の進展
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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