研究課題/領域番号 |
19K03535
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
川平 友規 東京工業大学, 理学院, 准教授 (50377975)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 複素力学系 / 退化ベルトラミ方程式 / 正則力学系 / マンデルブロー集合 / 反正則力学系 / トライコーン / 放物的分岐 |
研究実績の概要 |
本研究課題は,複数の周期点が退化した状態である放物的周期点をもつような複素力学系を「おだやかに」摂動し,力学系のカオス部分を本質的に保ったまま放物的周期点を安定な「双曲的」周期点の組へと変化させることができるか,という問題(Goldberg-Milnor予想とよばれる)に対し,μ-等角写像とよばれるクラスの写像を用いたアプローチを行うものである.今年度の主たる研究成果は以下のとおりであった: ・Goldberg-Milnor予想へのアプローチとして,μ-等角写像に収束すると期待される擬等角写像の列に対する考察をおこない,幾何学的有限と呼ばれるクラスに属する有理関数に関しては一定の成果が得られた. ・数式処理ソフトMathematica と Porter-Shimauchiのアルゴリズムを用いて,力学系の擬等角変形の可視化を行った. ・Yi-Chiuan Chen氏と共同で,双曲的2次多項式による力学系が退化して放物的2次多項式による力学系が生成される現象について,正則運動の退化という形で定式化し,そのオプティマルな速度評価を与えた.また,力学系のカオス部分が片側ヘルダー連続に退化することを示し,その退化を記述する半共役の存在について新しい証明を与えた.現在,論文を執筆中. ・稲生啓行氏と共同で,トライコーンのアクセシビリティーに関する研究を行った.こちらも論文を執筆中.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスのパンデミックにより,予定していた海外出張や共同研究者の招聘がすべてキャンセルとなった.生活環境の変化やオンライン講義にともなう教育負担の実質的な増加により,研究に使える時間が大幅に減ってしまった.
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今後の研究の推進方策 |
パンデミックの影響は大きく今後も国内・海外出張は制限されると予想されるが,オンラインでの研究集会参加や共同研究にも慣れてきたので,うまく活用しながら研究上のインプット/アウトプットに勤めたい.研究課題そのものについては,引き続き退化ベルトラミ方程式の解の構成およびその同相性の判定法について地道に進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響で2020年1月以降に予定していた比較的長期の研究者招聘や国内外での研究発表がつぎつぎにキャンセルされ,旅費に相当する部分が余ってしまった.パンデミックが落ち着いたら,随時旅費として利用したい.また,研究期間を1年間延長することも検討している.
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