研究課題/領域番号 |
19K03547
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
熊ノ郷 直人 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (40296778)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 解析学 / 関数方程式論 / 経路積分 / 擬微分作用素 / 数理物理 / 確率論 |
研究実績の概要 |
2020年度までの研究成果により、環状型(トーラス型)の変数係数高階放物型方程式に対する相空間経路積分の時間分割近似法が、時間分割の幅がゼロに近づくとき、位置経路の終点と運動量経路の始点に関し広義一様収束する汎関数の条件を求めることができた。2021年度は研究計画に従い、この広義一様収束する汎関数の条件を、和や積、経路の平行移動や線形変換、経路に関する汎関数微分など演算の観点から、できる限り多くの演算に関して閉じた条件に書き直し、その条件で、汎関数の2つの集合を定義した。相空間型の場合は、位置と運動量を同時刻に定義できない不確定性原理があるため、物理的には定義をどうすべきかという点で様々な解釈がある。こうした物理的な問題に惑わされないように、数学的演算の豊富さだけの観点から、汎関数の2つの集合を定義した。特に、位置と運動量を同時刻に定義できない不確定性原理があるため、様々な演算を成立させるために、時刻における位置を表す汎関数を含む集合と、時刻における運動量を表す汎関数を含む集合の2つの汎関数の集合を定義した。2つの汎関数の集合は、高階放物型方程式に対する基本解となる汎関数や、時間に関する積分となる汎関数を共通部分として含み、それぞれ、和や積、経路の平行移動や線形変換、経路に関する汎関数微分の演算に関して閉じている。環状型は運動量が離散的な値を取る点、高階放物型は漸近展開を用いる点、収束や演算の観点だけから集合を定義した点で、2つの集合の汎関数の条件は一見不自然なものとなった。しかし、2つの汎関数の集合における演算が豊富であるので、汎関数の条件をチェックしなくても、その集合に属する基本的な汎関数に豊富な演算を適用することで、相空間経路積分可能な多くの汎関数を創ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の目標は、2020年度に得た環状型(トーラス型)の変数係数高階放物型方程式に対する相空間経路積分の時間分割近似法が、時間分割の幅がゼロに近づくとき、位置経路の終点と運動量経路の始点に関して、広義一様収束する汎関数の条件を、和や積、経路の平行移動や線形変換、汎関数微分など数学的演算の観点から、できる限り使いやすい汎関数の2つの集合を構成することであった。2つの汎関数の集合の構成まで進んでいるので、おおむね順調に進展していると言える。しかし、COVID-19の蔓延により、今後の環状型(トーラス型)相空間経路積分としての理論の構成や偏微分方程式への応用を考える上で重要となる、他の研究者との研究連絡や、これまでの成果発表が、十分にできなかった点が残念である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度までの研究成果で、環状型(トーラス型)の変数係数高階放物型方程式に対する相空間経路積分が存在し、しかも、和や積、経路の平行移動や線形変換、汎関数微分などの演算に関して閉じた汎関数の2つの集合を定義することができた。2022年度は、この汎関数の2つの集合を用いて、環状型(トーラス型)の相空間経路積分が、標準的な積分の性質に類似した性質を満たすか、例えば、相空間経路積分と時刻に関する積分の順序交換、相空間経路積分と極限演算との順序交換、摂動展開、相空間経路積分と経路の平行移動などの性質を調べていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス(COVID-19)の蔓延により、2021年度に予定していた経路積分や擬微分作用素について、他の研究者との研究連絡、国際会議や研究集会への参加や研究発表、のほとんどができなくなった。今後、環状型(トーラス型)の相空間経路積分の一般理論の構成や、偏微分方程式論への応用を考えて完成度を高めるうえでは、研究連絡や研究発表が重要になってくる。COVID-19がおさまったあと、なるべく早い時期に、他の研究者との研究連絡、国際会議や研究集会への参加や研究発表をしたい。
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