本年度は、コスト関数がコントロールについて無限遠方で1次以上2次未満の増大度を持つ場合に、確率最適輸送問題の値関数が有限であるための必要十分条件及び、時間が0に近づいた時の確率最適輸送問題の漸近挙動を与えた。時間が無限大になる場合にはこの確率最適輸送問題は無限大に発散することと発散レートも与えた。シュレディンガーの問題に関しては、値関数が0になるマルコフ過程がエルゴード的な場合に、シュレディンガーの汎函数方程式の解が時間無限大で初期確率分布と終期確率分布の直積測度に弱収束することを示した。特に、初期確率分布と終期確率分布が2次のモーメントを持ち、終期確率分布の微分エントロピーが有限な場合に、解の初期確率分布と終期確率分布の直積測度に対する相対エントロピーが時間無限大で0に収束することを示した。また、値関数の時間無限大での極限が終期確率分布の定常確率分布に対する相対エントロピーに収束することを示した。 研究期間全体を通じて実施したその他の研究の成果については、(1) シュレディンガーの問題を初期確率分布を確率分布に持つ確率変数の汎関数と考えたときの連続性と半凹性、初期分布の関数としてオーダー2のWasserstein距離に関してのリプシッツ連続性を示した。(2) シュレディンガーの汎函数方程式の解について、その初期及び終期確率分布、積分核に関する強位相と弱位相での連続性を示した。(3)初期終期確率分布を固定した場合と各時間での確率分布を固定した場合の連続なセミマルチンゲールに対する確率最適輸送問題に対する双対定理を一般化した。(4)コスト関数が凸でない場合に、最適輸送問題のラグランジアン定式化を与えた。(5)凸でないコスト関数を持つ確率最適輸送問題の解のMarkov性を状態空間が1次元の場合に示した。
|