研究課題/領域番号 |
19K03552
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
上村 稔大 関西大学, システム理工学部, 教授 (30285332)
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研究分担者 |
富崎 松代 奈良女子大学, その他部局等, 名誉教授 (50093977)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Dirichlet 形式 / 飛躍型マルコフ過程 / 均質化法 / Mosco 収束 |
研究実績の概要 |
始めに,均質化法と呼ばれる問題を考えた.Levy 測度の係数に相当する関数に対して,適当な条件を課すことにより均質化法の導出を試みた.局所作用素,すなわち2階の偏微分作用素に対しては,係数が周期性を持つ場合については,調和平均を用いた極限(correctorと呼ばれる)が現れることが知られている.非局所作用素に対応する飛躍型作用素の場合には,昨年度の業績概要で一部述べたが,係数の関数の平均そのものが現れることを示すことが出来た.さらには,係数に有界性の仮定をおかず,適当な可積分性をおくだけでよいことも分かった.これは,ドイツ・ドレスデン工科大学教授 R. Schilling 氏との共同研究として,その結果が ROMANIAN JOURNAL OF PURE AND APPLIED MATHEMATICS に掲載された. また,飛躍型マルコフ過程に対応する Levy 測度の係数に相当する関数が,原点で退化したり発散したりする場合について,マルコフ対応する過程の大域的性質について検討した.特に,マルコフ過程が存在する(対応する)ための,係数が原点において発散するオーダーを規定することが出来た.退化する場合は,とくには係数に必要なくマルコフ過程の存在が示されるが,発散する場合においては,マルコフ過程の状態空間と呼ばれ集合の次元よりも低いオーダーをもつときのみに存在が示されることが分かった.この結果は,飛躍を持つマルコフ過程論の研究においては,画期的な結果と思われる.一部結果を,2020年6月に,ポーランド工科大学で開催されてた研究会「Theory of Markov Semigroups and Schrodinger Operators」で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マルコフ過程の系列の Mosco 収束を通じて,均質化法を示すことが出来ることから,これまで Mosco 収束の研究で培った手法の幾つが均質化法にも有効に働くことがわかった.そのことで,均質化法のための条件を比較的容易に確認することができ,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,引き続き次の2つのテーマについて検討していく予定である, 一つ目は,飛躍型マルコフ過程,もしくは飛躍拡散過程の系列に対する均質化法の研究を進めていく.拡散過程において,ドリフト項と呼ばれるベクトル場を持つときの拡散過程については,これまでは有界な場合や,何らかの微分可能性がある場合についてはすでに研究はされていたが,微分可能性がない場合や,有界性が期待できない場合については殆ど検討されていないのが実情であるが,有界性がない場合でも,適当な可積分性がある場合において均質化法が示せるのではないかと思われる.このことを鋭意検討する予定である. 2つ目は,本年度に一部導出した,Levy 測度の係数が退化したり発散することを許す場合に対応するマルコフ過程の経路の性質について考える予定である.特に,大域的性質である,再帰性・過渡性が退化や,発散したりすることが,どのように経路の性質に影響するかを確かめる. これら二つのテーマはいずれも,主に解析的な手法である Dirichlet 形式論を用いて研究を推進していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究課題に関連する国際研究会を対面で開催する予定にしていたが,コロナ禍の影響のため開催を断念した.この研究会で,欧州および北米の研究者の招へいが出来なくなったため,その分に予定していた招へい費が使用不可となったことが大きい.これに関しては,次年度に,一部計画を変更して,遠隔を取り入れた形で研究会を企画している.その際に,国外だけでなく,国内の研究者を招へいすることにして,そのための滞在費の一部として支出を計画している.
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