研究課題/領域番号 |
19K03554
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中村 玄 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (50118535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | バイブロサイス地盤解析法 / 非等方性 / 履歴型粘性 / ND- map / 一意接続定理 / 断層 / 緩和テンソル / 同定の一意性 |
研究実績の概要 |
まずこの研究の研究期間全体における研究目的について言及しておく。それは地盤が非等方性と履歴型粘性を持つ場合について、バイブロサイス地盤解析法の数学的正当化を行う事である。地盤のモデル化については、地盤を区分的に非等方・均質粘弾性体とモデル化する。またバイブロサイス地盤解析法の計測データは所謂localized Neumann to Dirichlet map(loc.ND mapと略)としてモデル化する。この計測データのモデル化の妥当性については先行研究がある。所で履歴型粘性がない場合については、すでに研究代表者の2019年度迄の先行研究により研究目的は達成されており、その研究を履歴型粘性がある場合に拡張するのが、2020年度以降の研究の主たる目的である。 この目的達成の為の第一関門であるHolmgren -Johnの大域的一意接続定理は、2019年度に証明することが出来、 2021年度3月にSpringer出版社の本の一つの章として出版された。 研究の次の関門は、地盤の関心領域に於ける粘弾性の同定に必要な計測時間の評価である。それにはHolmgren-Johnの大域的一意接続定理を、弾性波の実体波の中で最も遅い波の伝搬時間(travel time)と関連付ける必要がある。しかし非等方性がある場合は、等方弾性の場合と違って、地盤の接ベクトル束には距離テンソルが定義出来ないという問題点がある。そこでこの接ベクトル束の各ファイバーにノルムを定義し、それを用いて上述の伝播時間を定義した。 また関連研究として、準静的な粘弾性地盤内の断層とその緩和テンソル同定の一意性の研究を開始した。この逆問題では、地盤の瞬間弾性テンソルは既知として、断層と緩和テンソルの同定の一意性の問題を、直交異方的スカラーモデルに対して示した。ここで緩和テンソルについては、区分的均質性を区分的解析性に迄一般化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度では、研究目的実現の為の研究の第1関門であるHolmgren-Johnの大域的一意性定理が一挙に証明出来た。それに比べて2020年度では、研究の第2関門突破に予定以上に時間を要した。その理由は二つある。一つの大きな理由は、関連研究が急速に進展し、それに時間を取られてしまった為である。もう一つの理由は、第2関門の内容が幾何学的であり、解析を専門とする研究代表者には不慣れな内容であった為である。
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今後の研究の推進方策 |
何よりもこの研究の研究期間全体における研究目的である非等方性と履歴型粘性を持つ地盤に対するバイブロサイス地盤解析法の数学的正当化を目指す。研究の第2関門が突破出来たので、研究の最後の関門であるloc.ND-mapの伝播の証明を集中的に行う。方策としては、履歴型粘性がない場合のloc.ND-mapの伝播の証明で用いた混合型境界条件を持つ初期値境界値問題の考え方が有効と思われるので、この考え方に基づいて研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費を中心に研究費の使用予定を考えていましたが、新型コロナにより国内外の出張が出来なくなり、残額分が次年度使用額として生じました。
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