研究課題/領域番号 |
19K03556
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
奈良 光紀 岩手大学, 理工学部, 准教授 (90512161)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 偏微分方程式 / 進行波 / 安定性 / 空間的非等方性 / 分岐問題 |
研究実績の概要 |
2023年度の研究実績の概要は以下の通りである。
1)昨年度に引き続き、帯状領域におけるバイドメイン方程式の分岐問題について、数値計算で観測された不安定化現象を理論的な側面から考察した。その結果、当初計画していた研究成果を得るためには、分岐計算において技術的困難があることが確認された。特に、優臨界(super-critical)と劣臨界(sub-critical)の判断条件を明確にするのが難しく、この解決を模索した。これは明治大学の俣野博氏、University of Pennsylvaniaの森洋一朗氏との共同研究である。 2)線形バイドメイン方程式と線形熱方程式の定性的性質の違いについて考察した。熱方程式における熱核(heat kernel)に対応する、バイドメイン方程式の基本解は負の値を取る部分があり、また回転対称でない形状をしている。これが、バイドメイン型Allen-Cahn方程式で平面波の不安定性が生じる原因である。不安定化の後に形成される進行波の形状と、基本解の形状との関係について、理論的なつながりを考察した。これを理論的に解明するための定式化および解析手法について検討した。 3)空間的に非等方的な情報伝播を表現する数理モデルとして、ネットワーク(グラフ)上の反応拡散型方程式について調査を行った。近年、注目されているテーマであり、本研究との関連性・手法や結果の応用の可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、予定していたテーマについては複数の論文としてその内容をまとめ、学術雑誌に発表した。一方、分岐問題については技術的困難によりやや進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、バイドメイン型Allen-Cahn方程式における分岐問題に理論的な側面から取り組む。また、線形バイドメイン方程式の基本解の形状について考察し、バイドメイン型Allen-Cahn方程式で生じる平面波の不安定化のメカニズムを更に深く考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行のために、中止された研究集会があったことにより、研究発表の予定スケジュールが全体的に後ずれしたため、旅費の一部を次年度に繰り越すことになった。
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