研究課題/領域番号 |
19K03560
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山本 征法 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (00600066)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 函数方程式 / 拡散方程式 / 時間大域挙動 / 空間大域挙動 / 特異積分作用素 |
研究実績の概要 |
この研究課題は、偏微分方程式の形状と解の構造の相関関係を明らかにしようとするものである。当該年度は、この観点からの特に重要な指標を与える非圧縮性Navier-Stokes流に関する研究を行なった。Navier-Stokes方程式は、その非線形効果に空間非局所な作用素を含むモデルの代表格であるが、この効果により局所的な流速が瞬時に遠方に伝播するという特徴がある。したがって、この遠方に伝わる流速の成分がどのようなものであるかは興味深い問題である。当該年度の研究では、二次元平面の遠方において、流速を具体的な函数によって記述した。特に、流速の時間変化を詳細に表すことに成功した。この研究は、解の漸近展開における繰り込み法の適用によって実現したが、既存の研究においては、漸近展開の係数に現れる広義積分が上述の速い流速伝播の影響で発散するという問題があった。当該年度の研究では、Kukavicaらによる渦度を用いた流速の漸近近似の手法を参考に、これまで不可能であった高次の漸近展開を導出した。Navier-Stokes流において、渦度は流速と表裏一体の関係にあるが、流速と異なり渦度のFourier表象には特異的な作用素は含まれない。したがって、渦度においては流速のような瞬時の伝播は見られず、その可積分性を初期データによってコントロール可能である。流速の式を渦度によって記述すれば、上記の背景で問題となっていた漸近展開の係数の可積分性を稼げるというのが研究の主眼である。この研究については、現在査読付き学術雑誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型感染症の対策が緩和され、それに伴い最新の研究にアクセスしやすくなったため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究では、2次元平面におけるNavier-Stokes流を取り扱ったが、次年度は一般次元の流れについて考察する。研究手法としては、平面に対するのと同様のものが転用可能であると予想している。また、空間非局所な作用素を含む方程式として他に分数冪拡散方程式を研究してきたが、その応用例として蝗害をもたらすワタリバッタの走化性モデルについて考察する。一般に、走化性方程式では生物の総質量あるいは密度によって解の「爆発」と呼ばれる現象が見られるが、爆発のきっかけとなる量は方程式を取り扱う枠組みによって異なる。ワタリバッタの挙動を記述する上で妥当な枠組みが何かについても考察を開始する。この生物は不定期に集団相を呈し巨大な群れを形成して大移動をするが、近年の研究でこの走化性のメカニズムが解明されつつある。今後の研究では、この現象になぞらえて爆発解の構造を解き明かしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に、新型感染症への対策として、複数の出張を取りやめたため、旅費として当初申請した経費に未使用分が生じていたため。 当該年度より状況の改善が見られるため、研究打ち合わせや情報収集あるいは研究成果発表のための出張で経費は使用されつつある。
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