研究実績の概要 |
身の回りに起きる複雑な現象を解明するためには, 偏微分方程式の研究が有効である.偏微分方程式の解の存在や正則性を論じるとき,ソボレフが導入した関数空間,いわゆるソボレフ空間,が重要な役割を果たしてきた.最近では身の回りに起こる現象がますます複雑となり,それに伴って,その現象を記述する偏微分方程式とそれを解明するための関数空間が多様化している。さまざまな関数空間の性質を解明することにより,偏微分方程式の研究を発展させることを目的とした研究を行い,国内の研究者ばかりでなく海外の研究者と研究交流を行った。この研究の発展として,一般の偏微分方程式の解を求めるために,非自律系の汎関数 INTEGRAL[ F(x,|Du|)] の最小解の存在と正則性を調べる研究が盛んに行われている。本研究では,2重層汎関数 Fp,q(x, t) = t^p+ (b(x)t)^q に関する最近の研究を発展させることから始めて,さらに一般の場合に応用できる方法を開発することを目的とした研究を行った;ここに, 1 < p < q < ∞ かつ b は非負有界 でかつθ-H¨older (θ ∈ (0, 1]) である。これらの成果の一部は次の論文で公表した。 1.Yoshihiro Mizuta and Tetsu Shimomura, Boundary limits of monotone Sobolev functions for double phase functionals, Osaka J. Math. 57 (2020), 819-826 2. Yoshihiro Mizuta and Tetsu Shimomura, Boundary growth of Sobolev functions for double phase functionals, Annales Academic Scientiarum Fennica Mathematica 45, 2020, 279-292
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,さまざまな関数空間の性質を解明することにより,偏微分方程式の研究を発展させることを目的とした研究を行い,国内の研究者ばかりでなく海外の研究者と積極的に研究交流を行った。とくに,pーラプラス方程式 - div (|D|^(p-2) Du) = 0 は,変分法,幾何学的解析学,擬等角写像,非ニュートン流などの研究に深く関連している.これは,汎関数 INTEGRAL[ |Du|^p] のオイラー・ラグランジュ方程式である。この研究の発展として,一般の偏微分方程式の解を求めるために,非自律系の汎関数 INTEGRAL[ F(x,|Du|)] の最小解の存在と正則性を調べる研究が盛んに行われている。 本研究では,2重層汎関数 F(x,t) = t^p + a(x) t^q に関する最近の研究を発展させることから始めて,さらに一般の場合に応用できる方法を開発することを目的とした研究を行った。 この目的を遂行するために,これまで共同研究を行ってきた研究者と密接な研究交流を行うとともに,各種の研究集会に参加して,新たな展開の可能性を探るとともに,得られた研究成果について講演・公表してきた。ここで得られた知見を生かして,国内の研究者ばかりでなく海外の研究者と積極的に研究交流を継続して行い,2重層汎関数に関する関数空間のさらなる研究を発展させるとともに,偏微分方程式への応用を目指した研究を行い,本研究のさらなる発展につなげる。
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