研究実績の概要 |
前年度に引き続き、相互作用する振動子が起こす同期現象についての標準的な数学モデルである蔵本モデルについて起こる同期現象の解析を行った。従来の研究では相互作用する振動子たちの自然振動数が従う確率密度関数がひとつの極大値をもつひと山型の問題を考えることが主流であった。本研究においてはそれを拡張し、自然振動子の確率密度関数が2つの極大値を持つ場合(いわゆるふた山型)の場合を考察した。この研究において、方程式を線形化して得られる線形作用素の一般化固有値が虚軸上をまたぐことにより、ホップ分岐が生じ、これにより非同期状態から同期状態である周期解が生じることを厳密に証明した。これは円周上をまわる振動子群において、2つのクラスターが発生し、それらが互いに逆向きに回転する新しい現象である。そのような分岐現象が起こることの数学的な証明を与えたことは世界に先駆けた新しい結果である。またその証明において、本研究者が構築した一般化スペクトル理論が本質的に重要な役割を果たしていることも意義深い。すなわち、虚軸をまたぐ固有値は厳密な意味の固有値ではなく一般化固有値であり、従来の理論では解析できない新しい結果である。
本研究の結果は、 "A Hopf bifurcation in the Kuramoto-Daido model", J. Diff. Equ. Vol.280, no 15, 546-570, (2021). として国際誌に受理された。
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