研究実績の概要 |
同期現象の標準的な数理モデルとして蔵本モデルがよく知られている。互いに相互作用(引力)を及ぼす振動子たちがなす微分方程式系である。蔵本モデルが実際に同期現象を起こすかどうかは長らく未解決問題であったが、本研究者はこれを解決し、さらに本年度においてはスパース(薄い)なグラフ上の蔵本モデルの解析を行い、同期が起こるための閾値の計算や分岐の構造の計算を行った。デンス(みつ)なグラフとスパースなグラフでは異なる結果が得られ、グラフの構造が蔵本モデルの力学系的な振る舞いに違いを与えることが明らかになった。この結果は論文 H.Chiba, G.S. Medvedev, M.S. Mizuhara, " Bifurcations and patterns in the Kuramoto model with inertia", J. of Nonlinear Science ,(2023) として出版された。さらに、この結果を機械学習に応用することでよい性能を持つ機械学習の設計ができた。機械学習の一種であるリザバー計算に蔵本モデルを用いることで、リザバー内部の力学系が分岐を起こした直後に計算能力が上がるという "edge of bifurcation" の予想を数学的に証明した。リザバーの力学系のパラメータを変化させるとき、分岐が起きた直後に計算能力があがることを証明できた。この結果は論文執筆中である。
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