研究課題/領域番号 |
19K03569
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
千原 浩之 琉球大学, 教育学部, 教授 (70273068)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ラドン変換 / X-線変換 / 再生公式 / フーリエ積分作用素 / 解析的波面集合 / 幾何学的トモグラフィー / トモグラフィー |
研究実績の概要 |
本研究は、まずは「幾何学的トモグラフィー」または「積分幾何学における超局所解析」とよぶのが適切かと思われる分野への新規参入を目指しており、そのための準備を進めてきた。本年度は、前半は準備のための勉強や情報収集をするだけで研究をするまでには至らなかったが、後半になってからはささやかな内容ながら研究活動を行えるようになり、新規参入するという意味では目的を達成したと言ってよく、現在では日々少しずつ研究活動が進んでいる。 本年度の成果は1つで、ユークリッド空間上の関数をある種の対称性をもつ超曲面上の積分に対応させる積分変換の再生公式の確立である。地震学では平面上で座標軸を固定し関数のグラフとして表される放物線あるいは双曲線を考え、その上の積分変換を地震波の観測データとみて再生公式により地球内部の情報を取り出すことが1986年頃から研究されており現在も続いている。2016年に Moon がこれに対する再生公式を提案した。筆者は、放物線や双曲線をユークリッド空間内の放物面や双曲面を含むかなり一般化されたある種の対称性をもつ超曲面に一般化して再生公式を確立した。とくに対称性を上手く活用するための関数空間を導入することにより、Moon の論文では数学的に曖昧であった取扱可能な関数の枠組みを明確にした。この論文は学術雑誌に投稿中であるが、最近届いた審査レポートでの評価は良好であり、いくつかの変更や訂正を施して再提出中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界的にはメジャーだが国内では極めてマイナーな当該分野に全くのゼロから単独で新規参入するという目的は達成されつつあり、関連する外国での世界最高水準の研究集会に積極的に出席して情報収集に努めたので、筆者の身の丈に合った研究課題が比較的沢山得られており、日々の活動が充実している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ユークリッド空間におけるラドン変換等のd-平面変換に関連した超局所解析に応用するための解析的多様体上の大域的フーリエ積分作用素の基礎研究を進めている。ラドン変換に対応する部分は既に結果を得ており、現在はX-線変換に対応した研究を進めているが、ここまでは成果を得られると思われる。一般のd-平面変換では同じプログラムを実行するのは極めて難しいことがわかっているが、これまでの研究の課程で得られたある知見とアイデアにより、やや異なる研究に発展する見込みである。 これ以外に、超局所解析の手法から考察する、データの標本化、生体内の異物による歪み、屈折を考慮するX-線変換の定式化と再生公式と基本的な性質、などの筆者の身の丈に合った課題が数多くあるので、可能な限り成果を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究集会共同開催のために会場費と複数の講演者の旅費を負担する予定であったが、組織委員らで分担した結果、筆者の負担は会場費だけになったことが主な理由である。なお、今年度の活動により「世界では商業計算機ソフトウェアの MATLAB は MS-Office と同程度に普及しており、純粋数学を専攻する者も含めて誰でも使いこなせることが常識であり、幾何学的トモグラフィーの分野では必須の道具である」ということを痛感したので、MATLAB の初回購入資金に充てる。
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