サブリーマン多様体において,非線形偏微分方程式の粘性解理論に基づいた準凸関数の特徴づけについて考察した.前年度の研究で提案した曲率タイプの二階楕円型作用素によるアプローチをさらに深化させ,ユークリッド空間の場合との本質的な違いを明確にした.また,ハイゼンベルグ群上の曲率流の凸保存性への応用も改善できた.これらの成果に関する論文は現在投稿中である.
サブリーマン多様体上の二乗距離関数がどのような凹凸性を持つのかは幾何解析の基本的な問題の一つであり,最適輸送や制御理論などの分野にも多くの応用がある.2023年度ではこの重要な課題についても研究を行い,ステップ2のカルノー群に対して二乗距離関数の半凹性の結果を得られた.また,ステップ3以上の場合はその半凹性が一般的には成り立たないことも示せた.これらの研究結果をまとめた論文は現在投稿準備中である.
凸解析及び粘性解理論に関連する研究課題として,放物型方程式の解の冪凹保存性と漸近挙動を用いて,Borell-Brascamp-Lieb不等式の新しい別証明を与えた.非線形拡散方程式と関数不等式との関連を明らかにし,従来の手法と異なった斬新な不等式への考察方法を構築できた.この研究成果については複数のセミナーや研究集会において研究発表を行った.
|