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2021 年度 実施状況報告書

追跡可能測度による力学系の特徴付けに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K03578
研究機関宇都宮大学

研究代表者

酒井 一博  宇都宮大学, 共同教育学部, 教授 (30205702)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード力学系理論 / 擬軌道尾行性 / 尾行可能測度 / 双曲性 / 占有的分解
研究実績の概要

fを多様体M上の微分同相写像とし, M上の確率測度全体をM(M)とする。また,f-不変確率測度全体をM_f(M)で,エルゴード的f-不変確率測度全体をM_f~e(M)で表す。本研究では,PS={f:\mu-尾行可能 (\forall \mu \in M(M))}, IS={f:\mu-尾行可能 (\forall \mu \in M_f(M))},そして ES={f:\mu-尾行可能 (\forall \mu \in M_f~e(M))}を考察対象とし,これらの集合のC~1-位相に関する内点を一様双曲性や非一様双曲性の概念を用いて特徴付ける。
本研究推進のための基盤となる研究成果が2018年12月,Axioms; https://doi.org/10.3390/axioms7040093(オープンアクセスジャーナル)に掲載された。これによりPS, ISのC~1-位相における力学的特徴付けは完了している。昨年度の研究では,上記論文において2次元トーラス上に構成した力学系の力学的性質の一般化に成功している。具体的には,Filtrationの概念をうまく利用することにより「尾行性は持たないが,M上のルベーグ測度mが尾行可能測度となる」力学系の開集合の存在を,C~1微分同相写像の範疇で示すことができた(Axioms 2021, 10(1), 38; https://doi.org/10.3390/axioms10010038)。
本年度も,昨年度及び一昨年度と同様に「ESのC~1-位相に関する内点に属する微分同写像の特徴付け」と「尾行可能測度の非一様双曲型力学系への応用」について,研究計画に従い研究を推進した。ESについては,本年度においてもS~1上のダンジョワ写像を周期点の近傍に(局所的に)埋め込むことに挑戦し続けたが,現時点で有効な進捗は得られていない。

現在までの達成度
現在までの達成度

3: やや遅れている

理由

ESのC~1-位相の内点に関する特徴付けについては有効な進捗は得られていない。2020年度以降の第1の目的は,エルゴード的尾行可能測度のサポート全体の和集合(これは閉集合となることがわかる)上に占有的分解の存在を示すことである。例えば,そこに占有的分解が存在しないと仮定した場合,C~1-位相で摂動することにより固有値(絶対値)1をもつ周期点pの存在が証明できる。それがもし複素固有値であれば,S~1上のダンジョワ写像を周期点pの近傍に(局所的に)埋め込むことでエルゴード的測度\mu~eの存在が証明できる。一方,ダンジョワ写像は尾行性を持たないことから\mu~eも尾行可能測度でないことが証明され,矛盾を得ることができる。従って,複素数固有値が存在することの証明が残された主な課題となる。
測度論と尾行性理論を駆使し,実固有値を持つ周期点pに対し,ホモクリニック軌道H_pを構成すること,そしてH_pの近くに周期が大きくかつ複素数固有値をもつ新たな周期点qの存在を示そうとしているが,現時点では有効な解決策が見い出せていない。
一方,熊本大学の鷲見氏とのやり取りにより,尾行可能不変測度全体の,弱位相に関する内点に属する尾行可能測度を所有する力学系については,その解析に既存の尾行性理論が応用可能であることが明確になっている。このことを踏まえ,本年度もエルゴード的尾行可能測度を対象に同様な応用可能性について一定時間検討を行ってきた。2022年度は鷲見氏を訪問することによりエルゴード的尾行可能測度の内点について研究討議を実施し,上記とは別の視点からもESのC~1-位相に関する特徴付けについて研究を推進する。

今後の研究の推進方策

ESのC~1-位相に関する特徴付けについては有効な進捗は得られていないが,前述のように尾行可能不変測度の弱位相における内点に属する尾行可能測度があるような系については,既存の尾行性理論がその系の解析に応用可能であることが明確になっている。また,2019年度の研究により,不変な尾行可能測度のサポートと(通常の)尾行性についての関連が解明されている(本研究成果は力学系理論専門誌 Qualitative Theory of Dynamical Systems, Springer に掲載済)。
2020年度以降の第1の目的は,エルゴード的尾行可能測度のサポート全体の和集合(これは閉集合となることがわかる)上に占有的分解の存在を示すことである。例えば,占有的分解が存在しないと仮定した場合,C~1-位相で摂動することにより固有値(絶対値)1をもつ周期点の存在が証明できる。前述のように,測度論(エルゴード理論)や尾行性理論を駆使し,それがもし複素固有値であることが証明できれば矛盾を得ることができ,目的を示すことができる。従って,複素数固有値が存在することの証明が残された主な課題となる。
2022年度においては,2019年度,2020年度そして2021年度の研究成果を基に,熊本大学の鷲見氏(力学系系のエルゴード理論の専門家)と研究討議を重ねることにより占有的分解の存在を証明するとともに,本研究の成果をとりまとめ,総括する。

次年度使用額が生じた理由

(次年度使用額が生じた理由)エルゴード論的力学系理論の専門家である鷲見氏(熊本大学)を複数回訪問する予定であったが,2020年度末に「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」(文科省大学改革推進等補助金:令和2年度補正)の採択を受け,2021年度は4月当初から新学修支援システム改修設計及び運用のための準備を推進してきた。申請者は当該事業推進のための責任者の一人であり、新学修支援システムの構築(ルーブリックの運用設計)及びブレンディッド・ラーニングの推進準備のため多忙で,出張の予定を組むことが困難であった。

(使用計画)2022年度は,可能であれば前期終了後(夏休み中)と年度末にそれぞれ熊本大学(鷲見氏)への訪問を計画している。Aoki-Moriyasu-Sumi及びPrzytyckiの研究手法の一般化について研究討論を行うとともに,エルゴード的尾行性測度のサポート全体の和集合上における占有的分解の存在及びその双曲性の証明の可能性ついて研究セミナーを実施し,エルゴード論的力学系理論の視点から支援を頂く。それにより本研究の課題解決に向け,より一層の活性化を図るとともに,本研究の最終とりまとめと総括に取り組む。

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公開日: 2022-12-28  

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