研究課題/領域番号 |
19K03588
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
壁谷 喜継 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70252757)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 固有値 / 楕円型偏微分方程式 / 球面 |
研究実績の概要 |
平成31年ー令和元年度は、球面全体をほぼ覆う帽状領域での、 Neumann 境界条件下でのスカラー場型非線形楕円型偏微分方程式を検討した。まず、線形化固有値問題の解析による分岐点と分岐解の存在を、明治大学の二宮広和教授・University of Basel の Catherine Bandle 教授とともに解明した。研究対象となった Laplace-Beltrami 作用素の固有値は単純ではなく多重性があり、分岐解の存在を示すには方程式の非線形項をうまく使い、有限次元での汎関数の臨界点を求めるという工夫が必要であった。さらに、球面全体の場合の固有値では高い多重性をもっている固有値が、帽状領域にすると、互いに近いが異なるいくつかの固有値に分かれることを示し、各固有値からの分岐を示した。これらの成果は、2019年12月発行の日本数学会函数方程式分科会が所掌する国際学術誌である Funkcialaj Ekvacioj に掲載された。 また、領域が球面状の帯状領域の場合の Laplace-Beltrami 作用素の固有値問題も解析し、固有値の状況が帽状領域とどのように異なるかも解明した。この成果は、2020 年中にAmerican Institute of mathematics が所掌する国際学術誌である、Discrete and Continuous Dynamical Systems に掲載されることが決定している。 さらに、関連した話題として、東京大学の石毛和弘教授、向井晨人博士と共に、逆二次のポテンシャルを持つ線形熱方程式の解の最大値の挙動について研究し、この成果は国際学術誌 Applicable Analysis に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年次に解明すべき線形固有値問題について、球面の場合であるが解明できた。この成果と、「ねじれ関数」(torsion function) に関する評価を基にした Gel'fand 問題と呼ばれる、非線形問題への応用の結果も部分的に得ている。これらの成果を更に拡張し、まとめて投稿すべく原稿を作成・推敲中であり、令和2年中には投稿できる見込みである。 また、関連する球面上での分岐問題に関しても現在原稿を作成中であり、令和2年中に投稿できる気込みであるため。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、逆二次のポテンシャルをもつ非線形楕円型偏微分方程式や、球面状での Torsion 函数を起点とした Gelfand 問題、球面全体での非線形楕円型偏微分方程式を検討中であり、すべて固有値問題と関係を持っている問題である。適切な図書を購入したり、外国人研究者との意見交換をしたりして、固有値問題を手がかりにこれら非線形問題の解明に邁進する。
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