研究課題/領域番号 |
19K03590
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
生駒 典久 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (50728342)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Born-Infeld方程式 / 光線(light segment) / L^2正規化問題 / 正値解 / ポテンシャル |
研究実績の概要 |
今年度は(A) Born-Infeld 方程式の解析,(B) L^2-正規化解の存在問題,(C) 非線形反応項に大きなパラメータを含む方程式に対する解の存在問題,について研究を行った. (A) 光線 (light segment) を含む弱解を構成し,さらにこの関数のグラフの平均曲率の可積分性を明らかにした.またこの弱解を用いてエネルギー最小化元が弱解にならない例についても構成することができた.なおエネルギー最小化元が弱解とならない例についてはこれまで知られていなかった.これらのことに加え,昨年度2次元の場合は,最小化元が光線を持たないことを示していたが,この事実に対するよりシンプルな証明を発見できた. (B) ポテンシャル項とL^2劣臨界である一般の非線形反応項を伴うハミルトニアンに対し,L^2ノルムを一定にするという制約条件の下,ハミルトニアンの臨界点を求める問題を研究した.得られた成果は,平田ー田中(2019年)による手法をポテンシャル項付きのハミルトニアンにまで拡張し,ハミルトニアンの臨界点を得ることができたことである.また非線形反応項にどのような条件を課せば得られた臨界点がハミルトニアンの最小化元になるかという問題についても明らかにできた. (C) ポテンシャル項と非線形反応項に大きな正のパラメータを含む方程式の正値解や対称性を持つ解の存在を得ることができた.主に全空間上の方程式を扱ったが,本解析で用いた手法は有界領域上にも適用することができ,既存の研究の一般化にも成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下で述べることから研究はおおむね順調に進展している. まずBorn-Infeld方程式については,光線を含む弱解の存在を示すことに成功し,さらにそれを基にエネルギー最小化元であり方程式の弱解にならない例を構成することができた.このような弱解や最小化元は非常に印象的なものである. 次にL^2正規化問題について述べる.平田ー田中(2019)の論文ではポテンシャル項を含めることができていなかった.本年度の研究では,平田ー田中(2019)の手法を修正することによりポテンシャル項を含めることができることが分かった.本年度の研究を通じ本テーマは更なる発展の兆しが見られることから,次年度については更に深く掘り下げたい. 非線形反応項に大きなパラメータを含む問題も反応項に対する条件を弱めることができ,既存の研究の一般化をすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,「研究実績の概要」で挙げたテーマ(B)(L^2正規化解の存在問題)を重点的に取り扱っていく予定である.この研究テーマでは,手法をさらに洗練化させることができれば,色々な問題に適用できるのではないかという予想をしている.現在この分野は活発に研究されていることもあり,この予想が正しいものであるかを確かめたい.具体的には,L^2優臨界な項を含む非線形反応項やポテンシャル項を含む場合,また有界領域上での問題の考察についても行っていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度に引き続き,感染症の影響により国内出張および国外出張をほとんど行うことができなかったため未使用額が生じた.今年度は,現段階でも明らかではないが,国外出張が可能になれば国際共同研究や国際研究集会参加のための旅費として使用する計画である.更に研究討論等のための国内出張の旅費や専門図書等の購入も予定している.
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