最終年度は次のテーマについて研究を実施した: (a) 微分可能とは限らない汎関数に対する(対称)峠の定理とMonotonicity Trick,(b) L^2臨界であるL^2正規化解の存在. (a) Banach空間上の微分可能とは限らない汎関数に対し,Monotonicity Trick と呼ばれる手法が適用できることを示し,有界なPalais-Smale列が得られることを示した.さらに汎関数が対称性を持つ場合,正の無限大へと発散する汎関数の臨界値が存在することを示した.またこれらの定理を非線形反応項を伴うBorn-Infeld方程式に応用し,正値解と可算無限個の非自明解の存在を示した. (b) L^2臨界である非線形反応項を持つ非線形Schroedinger方程式に対し,少なくとも1つ非自明解が存在することを示した.さらに特殊な状況では非自明解が少なくとも2つ存在することも証明できた.一方,非線形反応項に対する仮定を少し変更してしまうと非自明解がなくなることも証明できた. 研究期間全体を通しては特異性のある方程式(Born-Infeld方程式)に対し,解の存在と非存在,最小化元の正則性,非線形反応項を持つ方程式に対する解の多重存在等,纏まった成果を得ることが出来た.また分数冪作用素を含む方程式についても解の存在やその性質についても解明することができた.これら以外にも研究期間を通じて発見した研究課題(劣線形反応項を持つ方程式の解の存在とその性質,L^2劣臨界非線形反応項とポテンシャル項を持つL^2正規化解の存在問題等)についてもある程度解明することができた.
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