研究実績の概要 |
過去の研究結果により、二つのパラメータを持つ(p,q)-Laplace 方程式の正値解が存在するようなパラメータの分類はほぼ終わっていたが、扱いが難しく詳細な解析が必要であるケースが残っていた。この特別な場合を解析する為に、Picone 不等式の一般化を行った。今回得られた結果は (p,q)-Laplacian への応用として知られている一般化Picone 不等式の結果を拡張したものとなっている。この得られた結果によって、扱いが難しかったパラメータの場合においての正値解の存在・非存在がより明確に判定できるようになった。さらに, パラメータの変化による正値解のエネルギー(積分量)などの評価にも応用することで、正値解の挙動の考察にも役立った。
またパラメータの変化により正値解の多重性を期待していたが、この多重性についてもパラメータが予想していた範囲にある場合には証明することが出来た。この証明のポイントは、方程式に対応するエネルギー汎関数の極小点を求めることによる。特に、この極小点の探し方がポイントとなるが、方程式に対応するfiber functionalのある種のエネルギーセットを変化させるためにパラメータを増やして探すことが一つ目のkeyとなっている. この手法はIlysov-Silva(2018)の結果を参考にして、我々の方程式に扱いやすく改良を加え発展させたものである。また、二つめのポイントは求めたものが強い位相 で極小点であるものが弱い位相でも極小点になっていることを示すことである。これは p-Laplace 方程式で既に知られている既存の結果が (p,q)-Laplace 方程式でも成立することを確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
一つ目に、固有値問題に付随した元々の(p,q)-Laplace方程式の正値解の多重性の結果が得られたので、これを元に、Fredoholm タイプの多重性の結果が得られないかどうか考察を行う。これは、単独の p-Laplacian の場合には Drabek などが p が2である Laplacian の場合とは異なる結果を出しているうちの一つに多重性の結果があり、これに相当する結果が成り立つのではないか、という予想に基づくものである。この為にまずは, Drabek などが用いた写像度の理論による結果があるので、(p,q)-Laplace方程式の場合に適用できるかどうか考察し、改良や発展を加えて、多重解の結果を得たいと考えている。
二つ目に、得られた一般化された Picone 不等式を活用することで正値解のさらなる解析を進める予定である。また、この一般化された Picone 不等式の正値解以外への応用方法を考察し、適用できる方程式の範囲を広げられるような一般化を行うことも考えたい。この一般化には非線形項をより一般で扱いやすくする為の改良と (p,q)-Laplacian を含むより一般の楕円型作用素への適用を考えることにある。
三つ目には、パラメータの変化による符号変化解の考察を行いたい。この考察により、antimaximum principle に関する研究へ繋げていきたいと考えている。これは元の p-Laplacian の固有値が第一と第二固有値の解析以外の情報が少ないことに起因している。そこで、まずは第一と第二固有値に近いパラメータを持つ場合に対して (p,q)-Laplace方程式の符号変化解の解析を行いたい。この解析の一つに解のエネルギー評価が必要となると考えられる。この評価に応用できる手法や不等式の改良や開発を行いたい。
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