研究実績の概要 |
初年度に (p,q)-Laplace 作用素に適用できるように Picone 不等式を一般化していたものをさらに改良し, 適用範囲を広げることに成功した。 この改良した一般化 Picone 不等式の適用範囲はかなりの部分がカバー出来ていると思われる。この改良した結果を用いて、研究対象である二つのパラメータを持った (p,q)-Laplace 方程式で先行研究では正値解が存在するかどうか不明な範囲が残っていたが、この範囲をより正確に解析する事が出来た。
研究対象である二つのパラメータを持った (p,q)-Laplace 方程式の正値解について、ある範囲にパラメータがあるときには正値解の多重性を予想していたが、これを解決した。具体的には、ground state が存在しているようなパラメータの最大範囲から少しずれた場合には ground state は極小点として残っていることを示し, 変形した汎関数に峠の補題を適用してもう一つの臨界点の存在を示した。ここで、ポイントとなるのは「①極小点の存在」,「②変形した汎関数の極小点が元々の汎関数の極小点でもあることを示す」、「③峠の補題でエネルギーが小さくなるような具体的な path の構成」であった。 ①では, fiber functional を用いて新たなパラメータを追加することにより近傍を変化させて極小点を探すという方法を導入した。これは Ilysov-Silva(2018) の手法を扱う方程式に適用しやすく改良・発展させたものである。 ②では、よく知られた強い位相での極小点が弱い位相でも極小点であることの証明が研究対象の (p,q)-Laplace 作用素でも成立することを確認した。 ③では、隠れた凸関数として知られた関数の形を用いて path を構成した。
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今後の研究の推進方策 |
1つ目に、最大値原理が適用できない場合である, 劣線形項に符号変化する重み関数を導入し, パラメータの変化による dead core を持つような非負値関数の研究を行う。最初に (p,q)-Laplace 作用素まで対象を広げるのは困難であるので, 先ずは単独の場合である p-Laplace 方程式から研究を行う。具体的には 1① Kaufmann-Quoirun-Umezu (2020) の p-Laplace 方程式の場合の ground state についての結果をさらに解析していく. 方法としては, 今まで扱ってきた (p,q)-Laplace方程式の研究手法や経験を元に ground state の解析を行ってみる。 1② Kaufmann-Quoirun-Umezu (2020) では、ある条件下では dead core 解の存在が与えられているが, パラメータが正の時には p=2 のラプラシアンのみとなっている。そこで、p が 2ではない一般の p-Laplacian の場合について考察する。
2つ目に, 2020年度に行うことが出来なかった, 研究対象の方程式である (p,q)-Laplace 方程式の antimaximum principle についての研究に着手したいと考えている。また、これに関連してパラメータによる符号変化解の存在・非存在についての解析も行いたいと考えている。符号変化解については過去にある程度の研究成果を上げているが, 不明な点が多い。そこで、「パラメータを減らして解析を行う」ことや、先行研究の結果がより多い単独の場合である「p-Laplace方程式」についても考察・研究を行ってみる。さらに、過去の研究では汎関数のエネルギー評価がポイントとなっていたので、エネルギーを評価するための方法や不等式が改良出来るかどうか考察する。
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