研究課題/領域番号 |
19K03592
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
齊藤 公明 名城大学, 理工学部, 教授 (90195983)
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研究分担者 |
三町 祐子 名城大学, 理工学部, 准教授 (00218629)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超汎関数空間 / 無限次元確率解析 / 無限次元ラプラシアン / 量子情報論 / 量子確率論 / ホワイトノイズ理論 / 力学系理論 / 数理ファイナンス |
研究実績の概要 |
令和2年の科学研究費助成金を受け,引き続き超汎関数空間の構成に基づき,無限次元確率解析を構築し,量子情報論等への応用展開を行った.得られた主な成果として,下記を挙げる.1)無限次元ブラウン運動を変数とするデルタ超汎関数を新しく定義し,この超汎関数に基づき,ホワイトノイズ超汎関数空間を高次レヴィラプラシアンにより分解することに成功した.同時にヴォルテララプラシアンを含む伊藤の公式の一般化を得ることができた.(IDAQPに掲載された)2)1)の成果に基づき,Accardi氏,Ji氏とともにこのデルタ超汎関数の掛け算作用素から量子ホワイトノイズ微分方程式を導出し,量子情報解析として更なる展開を行い論文をまとめた.この方程式はボゴリューボフ変換, ギルサノフ変換の量子拡張に深く関連する.3)昨年度成果を得たチェザロ型量子大数の法則と高次レヴィラプラシアンの応用について研究分担者の三町氏と共同して論文をまとめて投稿した.高次レヴィラプラシアンが高次のチェザロ型大数の法則の収束先である成果はいままでにない特徴づけとなり,ホワイトノイズ理論と量子確率論の橋渡しの役割を果たしている.4)フラクショナル差分方程式を議論することにより,フラクショナルポアソン過程の分布との関連性を明らかにし,更にフラクショナルポアソンノイズに基づいた確率解析を構築することに成功した.考察しているフラクショナル差分方程式はより一般的なものであり,フラクショナルポアソン過程より複雑な構造をもつ確率過程と関連することが予想される.現在存在性を解明中である.同時に,確率過程のシミュレーションも併せて数理ファイナンスへの応用も試みている.5)研究代表者が考案する超関数同士の積に閉じている新しい超関数空間上の確率解析の立場から,1)のデルタ超汎関数を考察し,量子場における発散量を示す超関数との関連性の研究も継続している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホワイトノイズ超汎関数として無限次元ブラウン運動を変数とするデルタ関数を新たに提唱して,高次のレヴィ・ラプラシアンによる無限次元のシュレディンガー方程式やヴォルテラ・ラプラシアンによる伊藤の公式の拡張も得た.さらに無限次元ブラウン運動を変数とする一般のホワイトノイズ超汎関数についても伊藤の公式の拡張を得ることに成功した.この成果は偶然現象を考察する際に現在の確率解析の適用範囲を拡大する.代表者の提唱している超関数空間論とも関連付けることができ,量子物理における発散量の定式化を併せて、確率解析として新しい展開が可能になった。今年度は出張が出来ないことが多く、ウェブ上にて打ち合わせ、議論、講演などを行い、共同研究に繋げている.更に,理論構築した,新しい視点の超関数空間の構成から高次レヴィラプラシアンに基づいた無限次元確率解析についても,量子確率論,量子情報論への応用展開が順調に進んでいる.これらの成果の中には,長年未解決であった問題(特に無限次元超関数の特徴づけ)に対する肯定的解決も含まれている.ホワイトノイズ超汎関数空間上の作用素に関する基礎理論研究と量子大数の法則への応用研究は本研究が量子確率論,量子情報論の基盤となることを明確にしている.研究協力者のAccardi氏,Kuo氏との連携,共同研究も成果をあげてきている.研究分担者の三町氏との共同研究も論文としてまとめた。離散ホワイトノイズに基づく確率過程のシミュレーションを実際に行い,確率的探索アルゴリズムなどを通じ,数理・データサイエンスとしての役割を見出すこともできた..
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今後の研究の推進方策 |
理論研究については継続して成果を上げ,得られた成果についてはすべてまとめるようにし,論文にて公表する.最終年度のため成果の総括を行い,応用に適した理論構築を進める.提唱する無限次元確率解析を無限次元ラプラシアンに基づき整理し,発散量を超関数として体系的に現象を捉えると同時に,離散ホワイトノイズに基づいたシミュレーション理論を構築し,シミュレーション数理実験の成果の整理を行う.特に,ファイナンス,量子情報,力学系理論などへの応用展開を中心に整理する.現在は,出張や研究集会開催等が困難なことが多いため,成果を最終的にまとめる方向で研究分担者、研究協力者との連携をインターネット電子ベースで進める.論文作成,シミュレーション実験結果もまとめに入り,最終的に成果を総括する.
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次年度使用額が生じた理由 |
ベイジアンネットワークに関連するソフトウェア購入の際に6580円の差額が生じたため,次年度の関連専門書籍等購入に繰り込むことにした.
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