研究実績の概要 |
本基盤研究を通じ,特に超汎関数空間の構成に基づき,無限次元確率解析を構築及び整備し,量子確率論,量子情報解析への応用展開において成果を多く得た.得られた主な成果として下記を挙げる.1)本研究における確率解析において基盤となる超汎関数空間を直ウィナー積分として捉え直すことにより,高次レヴィラプラシアンの定義域そのものをランダム化し,その生成する無限次元ブラウン運動の連続時間表現に成功した. 2)無限次元ブラウン運動を変数とするデルタ超汎関数に関する確率解析を展開し新しい超汎関数解析を構築した.これにより高次レヴィラプラシアンに基づく超汎関数微分方程式を導出することができた.3)2)の成果に基づき,Accardi氏,Ji氏とともにこのデルタ超汎関数の掛け算作用素から量子ホワイトノイズ微分方程式を導出し,伊藤の公式の異なる量子表現を得ることができた.この方程式はボゴリューボフ変換,ギルサノフ変換の量子拡張に深く関連し,量子情報解析の基盤となった.4)チェザロ型量子大数の法則と高次レヴィラプラシアンの特徴づけについて研究分担者の三町氏と共同して成果を得て論文をまとめた.この成果は高次レヴィラプラシアンの量子確率論的意義を与えたものとなり,このラプラシアンが作用素論上で大数の法則を考える際の期待値に対応する.5)高階フラクショナル差分方程式と高階フラクショナルポアソン過程の分布との関連性を明らかにし,更に高階フラクショナルポアソンノイズに基づいた確率解析を構築することに成功した,関連してHille-Yosidaの定理の拡張を得ることができた.6)確率過程のシミュレーションと量子情報論との関連性を得た.7)研究代表者が考案する超関数同士の積に閉じている新しい超関数空間上の確率解析の立場から,2)のデルタ超汎関数を考察し,量子場における発散量を示す超関数との関連性の研究も継続している.
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