研究実績の概要 |
研究課題に関連した以下のような成果をあげた。 1)研究代表者の四ツ谷は,非線形項が解の定積分値で定まる,非局所項を含むノイマン境界条件下での空間1次元アレン・カーン方程式の定常解の大域的分岐曲線が等高線に一致する曲面の具体的なパラメータ表示を得た.さらに,点対称な解の安定性について数学的な証明を与えた.これらは,欧文誌に2本の論文として発表した.細胞極性の発現の数理モデルの拡散係数を∞とした定常極限方程式に対しても,分岐曲線を決定する曲面の具体的なパラメータ表示を得て論文を投稿中である.加えて,拡散係数が有限の場合の定常方程式に対しても分岐曲線を決定する曲面の具体的なパラメータ表示の存在の感触を得た. 2)分担者の森田は,複数の半直線が1点で結ばれたジャンクションを持つ領域で,反応拡散方程式のフロント波の伝播の問題を考察した.ジャンクションを通り越して伝播する場合と,伝播がブロッキングされる場合があり,そのような現象を特徴付ける全域解の存在と漸近挙動,ブロッキングを引き起こす定在波の存在と安定性に関する結果を得た.欧文誌に2本の論文として発表した.卵細胞が非対称分裂を引き起こす前に,2種の競合するタンパク質が細胞膜上に局在化して分布することが実験で知られている.これを表現するバルク・サーフィス拡散モデルが提案されている.この数理モデルの数学的な解析を行い,あるパラメータ領域では,確かに局在化するパターンが存在することを示し,これに関して講演を行った. 3)分担者の川上は,単位球の外部領域における動的境界条件を有する拡散方程式の拡散極限に関する考察をまとめるとともに,分数冪Hardy--Henon 方程式の解構造の考察と,高階放物型方程式の可解性に関する研究を行なった.これらに関しては上記のように欧文誌に論文として掲載が決定しているともに,継続研究についても現在進行中である.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度の直接経費計 900,000円で,品目別内訳は,物品費 200,000円,旅費 500,000円,人件費・謝金 150,000円,その他 50,000円であった.しかし,直接経費支出額は計 210,737円で,品目別内訳は,物品費 210,737円,旅費 0円,人件費・謝金 0円,その他 0円で,直接経費差異は 689,263円である.令和元年度からの繰り越し額の 140,964円と合算して,次年度使用額は 830,227円となった. 物品費はほぼ予定通りに使用した.旅費が 0円となったのは,コロナウイルス感染拡大のため,予定していた国際学会が延期となり,さらに,共同研究のための国内外の出張が出来なくなったためである.人件費・謝金とその他の差異の原因は,対面で逐一結果をみながら実行する予定であった数値計算の作業補助等の依頼を,感染拡大防止の観点から自粛したことが理由である. 2021年度は,感染状況に注意しながら,共同研究のための打合せの出張を行い,数値計算を組織的に行ない新しい事実を発見し,それらをもとに数学的な解析をすすめていきたい.これらのために,請求した助成金と次年度使用額 830,227円をあわせて有効に使う予定である.
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