研究課題/領域番号 |
19K03594
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大崎 浩一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (40353320)
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研究分担者 |
鳴海 孝之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (50599644)
陰山 真矢 関西学院大学, 理工学部, 助手 (80824060)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非線形放物型方程式 / 反応拡散系 / 走性 / 社会性昆虫 / パターン形成 |
研究実績の概要 |
J. L. Deneubourg (1977)が提案した3因子走性系は,社会性昆虫であるシロアリの営巣過程に関する方程式で,シロアリの密度,堆積物質の密度,化学物質の濃度に関する3本の方程式からなる反応拡散移流系です.特に堆積物質は拡散しないため,数学的には部分散逸性を有する系に分類されます.今年度は空間次元が1および2の場合を取り扱い,Deneubourg系の解の時間大域存在性を研究しました.特に空間次元が2の場合は,これまでの類似の方程式からの類推で解の爆発を見込んでおり,初期関数の L^1-ノルムに関するスモールネス条件下にてこれを示しています.一方,解のパターン形成についても,定数定常解の空間対称性崩壊という視点から研究を行いました.定数定常解周りの線形化作用素に対する固有値が正の実部を有するための条件を求め,その条件下で数値シミュレーションを行ったところ,例えば正方形領域では試した限り全て解が爆発し,細長い領域では狙ったフーリエモードを有する定常解を捉えることができました.領域に依存するこの解の時間大域存在性と爆発の問題については,引き続き継続して研究を行います.Deneubourg系は部分散逸を有するため,対応する因子に平滑化効果がない,すなわち解作用素がコンパクト性を有しません.本研究ではこの困難に対して,解作用素の成分で堆積物質に対応する部分が,残り成分が示すコンパクト作用素の摂動とみなせることを示して,有限次元コンパクトアトラクターも構成しています.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空間次元が1および2の場合のDeneubourg系の解の時間大域存在性を研究し,それぞれの場合において査読付き論文が公表されています.また解のパターン形成についても,定数定常解の対称性崩壊に関しての理論的成果が上の査読付き論文にて公表されており,さらにその関連から,解の時間大域存在性と爆発の問題についての数値的成果が得られています.
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今後の研究の推進方策 |
Deneubourg系の解の時間大域存在性に関しては空間次元が1および2の場合について,本研究によって一定の成果が得られました.特に空間2次元の場合は初期値のスモールネスを課しているため,今後このスモールネスを課さない場合について研究を進めます.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症(COVID-19)拡大のため,さまざなま研究集会が年度末に中止となり出張が突然不可能となってしまいました.また予定していた研究打ち合わせも行うことができませんでした.さらには,ミツバチの観察実験についても新たな実験を始めることもできず,それらの予算を次年度に繰り越させてもらうこととしました.
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