研究実績の概要 |
線形主要部に structural damping term を含む双曲型方程式を主な対象として, 調和解析学的手法に基づいて解の時間大域挙動についての研究を行い, 以下の成果が得られた. 1. 線形主要部が微分損失型に分類される structural damping term を含む半線形波動方程式の初期値問題を考察した. 小さい初期値からの時間大域解の構成とその時間減衰評価, 及びその一次漸近形の同定を行った. 十分な時間減衰を得るために, 線形主要部からの微分損失による非線形項への影響を抑えることが要点である. 非線形項に課す正則性の条件を上げすぎないために, 時間大域解を構成する枠組みと初期値に課す正則性のバランスの見積もりが重要であった. 本研究は Tuan anh Dao 氏(Hanoi University of Science and Technology)との共同研究に基づく. 2. 昨年度に引き続き, 強消散項と弱消散項を補間する形での structural damping term を含む弾性波の初期値問題を考察した. 時間大域解の構成とその時間減衰評価, 及びその一次漸近形の同定を行った. この帰結として解の各成分ごとのノルムの最適な時間減衰評価が得られた. これは初期値の1つの成分の影響がすべての成分に影響をを及ぼすことを示す, 連立系として相互作用と考えることができる. また, この成果を基にして非線形問題への漸近解析も十分に期待できる.
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