研究実績の概要 |
今年度の研究成果は以下の通りである。 グラフの「無符号ラプラシアン行列」は、グラフの隣接行列と次数対角行列の和として定義され、Cvetkovic, Rowlinson, & Simic によって2007年に導入された概念であり、「Q-整数グラフ」とは、無符号ラプラシアン行列の固有値が全て整数であるようなグラフのことである。Q-整数グラフに関する研究として、Simic & Stanic は2008年の論文で、グラフの辺次数が小さい場合に、Q-整数グラフの分類を与えていた。Park & Sano は2019年の論文で、グラフの辺次数が高々6である場合に、Q-整数グラフの構造の分類についての結果を与えた。グラフの「Q-固有値半径」は、そのグラフの無符号ラプラシアン行列の固有値の最大値として定義される。Park & Sano は2019年の論文の結果の1つとして、グラフの「Q-固有値半径」が6である場合に、Q-整数グラフの構造の分類についての結果を与えていた。本研究では、次数列が(4,4,1,1,1,1,1,1)のダブルスターグラフを誘導部分グラフとして含むようなQ-固有値半径が6であるQ-整数グラフは存在しないことを証明した。これにより、グラフのQ-固有値半径が6のQ-整数グラフの構造の分類についてより詳しい結果を与えた。 本研究課題の研究期間全体を通じて実施した研究の成果として、グラフやポセット・マトロイドなどの有限離散構造について、様々な側面からの組合せ論的結果、およびその応用として、アルゴリズム的ゲーム理論・メカニズムデザイン分野における結果が得られた。
|