研究課題/領域番号 |
19K03601
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
横山 啓太 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 講師 (10534430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 数理論理学 / 証明論 / 逆数学 / 数学基礎論 / 組み合わせ論 / 強制法 |
研究実績の概要 |
令和元年度の主要な研究成果は「1.強制法翻訳による保存性証明と証明の長さの関係の解明」「2.有限的無限組み合わせ命題の反映原理との関係性の解明」「3.解析学の逆数学分析の新構想の構築」の3点である。 1は交付申請書における研究目的の1に対応する成果で、T. L. Wong, L. Kolodziejczykとの共同研究で2つの証明体系間における証明能力の同値性を示す保存性証明を汎用的な強制法翻訳により記述することで、証明体系間の多項式サイズによる証明の具体的な変換手続きを与えるための見通しの良い十分条件を与えた物である。 2は交付申請書における研究目的の2に対応した成果であり、Terrence Taoが2007年にブログにおいて提唱した有限的無限原理、特に有限的無限組み合わせ命題が算術における反映原理とどのように対応するかを調べた物である。関連して、Taoの有限的無限鳩ノ巣原理が算術的内包公理を導出するか、というGasper/Kohlenbachの提唱した問題を肯定的に解決した。 3は交付申請書における研究目的の4に対応した研究で、P. Shafer, D. Fernandez-Duque,H. Towsnerとの共同研究で完備超距離空間におけるPriess-Crampeの不動点定理や完備距離空間におけるCaristiの不動点定理の証明論的強さを逆数学の手法で明らかにした。これらに加え、今後発展させるべき新たな研究テーマとしてNavier-Stokes方程式の諸種の問題に関する逆数学的評価を行いたいと考え、専門家の方々にご協力をいただいて準備を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書で挙げた1,2,4の研究課題について概ね期待通りの成果を得ることが出来た。また本研究課題において特に野心的な課題として掲げている数学の難問未解決問題への逆数学的アプローチに関して、Navier-Stokes方程式のミレニアム問題の分析のための足掛かりの萌芽段階が得られたことは次年度以降の研究の大きな励みとなっている。 一方、3月に米国を訪問して集中的に研究を進める予定であった計算可能性理論におけるWeihrauch次数と算術体系の関連性についてのコネチカット大の研究者らとの共同研究は、感染症拡大の社会情勢を受けて計画を延期することとなった。これについては令和2年度に社会情勢を鑑みながらオンライン・直接の研究訪問を組み合わせて実施していく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は特に1,2,4の研究目的に関連した進行中の共同研究を進めるため、米国・英国・シンガポールの研究者との相互訪問を行う予定であったが、社会情勢をふまえ、定期的なオンラインミーティングなどを行うことで研究を継続していく予定である。 また、既に得られている研究成果について順次論文の執筆を行っており、これらの論文の完成・投稿も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた英国・ポーランド出張について先方から旅費をサポートされたため、次年度の研究招聘の予算に振り替えた。また、年度末の米国等への長期出張の予定が、感染症拡大による社会情勢の変化のため中止となった。この出張については社会情勢を考慮しながら令和2年度中に実施する予定である。
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