この年度では、本研究課題の主要テーマである辺着色されたグラフ上の色次数条件に関する分割問題の部分的解決に向けて様々な方向からのアプローチを試み、問題解決の糸口となり得る有用な結果をいくつか得ることに成功した。より具体的には、グラフの構造解析のためのアプローチとして、グラフの因子理論や支配数、グラフの安全集合に関わる結果の適用を試み、それによって新たな知見を得ることが出来た。辺着色されたグラフを扱う際には、各色によって誘導される単色のグラフの構造把握が重要であるため、辺着色を施さない一般のグラフに対する構造把握は当該分野の研究においても重要であり、本研究を推進することで改めてそうした方向性の重要性を再認識することが出来た。グラフの内部構造把握の重要性に関する詳細な説明については割愛するが、一例として、完全二部グラフで一つの部集合が1頂点のみからなる星グラフの存在に関する構造定理はグラフの支配数の解析とも関連して重要であり、星グラフをグラフの因子として含むための辺の数に関する極値問題がグラフの内部構造把握に重要な役割を果たすことが知られている。この年度では、そうしたグラフの星グラフ因子の存在に関する極値問題に良い解を与える定理を示すことに成功し、成果をまとめた論文がGraphs and Combinatoricsに掲載された。コロナ禍の影響による研究進捗の大幅な遅れもあって、残念ながら当初想定した当該未解決問題の解決には至らなかったが、構造的グラフ理論で得られている様々な結果の適用可能性につながる有用な知見が得られており、当該分野の研究進展について一定の成果を上げることが出来たと思う。
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